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「俺は保高の、双子の弟だよ」
慈愛に満ちた眼差しを向けられ、眞昼は言葉につまった。
「柊崎、俺、俺は……」
覚えていたのは手の平のぬくもり。それだけ。
誰よりも大切な相手だった晃夜を忘れていたくせに、どの面下げて「好きだ」なんて言えるだろうか。
血を分けた兄弟と分かっても、恋心は簡単に消えてはくれない。こうして一緒にいるだけで、ドキドキしてふわふわする。
ずっとずっと求めていた温かい手。兄だと思い込んでいた存在。けれどいつのまにか、晃夜がそれを大きく上回るほどの大切な存在になってしまった。
――結局、同一人物だったけど。
互いの手が触れ合い、晃夜がギュッと握ってくる。眞昼も強く握り返した。晃夜が自分を大切に思ってくれる想いが、手の平から伝わってくるようで胸が痛くなる。思いの種類が違うから、嬉しいのに切なくてたまらなかった。
晃夜は、ぽつりと語り始めた。
「四歳の時、保高は香帆さん……母さんに引き取られて、俺は親父に連れられて祖父母の家に行った。あの時俺は、当然お前も後から来るものと思い込んでた。まさかずっと会えなくなるなんて、夢にも思わなかったんだ」
晃夜は、全て覚えているのだ。
「どうして四歳で引き離されたの?」
素直な疑問を口にする。
「影を潜めて生活していた俺たち三人の存在が、祖父さんにバレたんだ。当初、祖父さんは香帆さんに手切れ金を渡して別れさせるつもりだったが、親父そっくりの俺を見て、気が変わった。俺だけ引き取ったんだ」
「そんな……」
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