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二卵性の双子は、顔は似ていないのが一般的だ。晃夜と眞昼はそれぞれ、生き写しのように父と母の顔を受け継いだのだ。
晃夜が深いため息をついた。当時の感情が蘇ってきたのか、その横顔は辛そうに歪んでいる。
そんな顔をして欲しくなかった。晃夜は、少し意地悪そうに笑うのが似合ってるのに。
「ごめん柊崎。俺、大切なこと、おまえのこと、全部忘れてた。薄情で酷いヤツだよな」
「保高……」
「でも、中三の頃の柊崎の姿は、映像でどんどん思い出してたよ。この前、柊崎の部屋でココア入れてくれただろ? あれで思い出した。おまえって、ココアとかいちごミルクとか、甘くて可愛い飲み物よく飲んでたよな」
晃夜がクスリと笑った。
「ああ、飲んでたな。毎回周りにからかわれたけど。そう言う保高も好きだろ、甘いやつ」
「うん、大好き」
「香帆さんが、俺たちは二人して甘いものが好きで、虫歯を心配したって話してたよ」
「そっか……」
そんな些細なこと、俺にも話してくれてたらよかったのに。
ほんの少し、母に対して恨めしい気持ちが湧くが、晃夜に話していたのならそれで充分だと心から思えた。
マンションが見えてくる。
「なあ、中三の時に、柊崎が転入してきたのって……」
いつのまにか、繋いだ手は揺れていた。
「中学卒業後は、海外留学が決められてたんだ。だからその前に、どうしても保高と同じ学校に行きたくて、思い出が欲しくて、適当なこと言って祖父さんを騙して、一年だけ公立通うの許してもらった」
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