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眞昼の頬を温かい雫が伝う。気づかれないように晃夜の肩に顔を埋めた。
「今回も、お前を迎えに行ったときは、半分不安もあったけど、でも俺が時間をかけて思い出させてやるって……。でも、実際お前は昔の写真はおろか、香帆さんから何も聞いてないようだったし。それじゃ、しょうがないのかなって思い直した。だって、俺んちにはお前の写真もあったし、親父や祖母さんと、お前の話をすることもあったから」
「そう、なんだ」
切なかった。いくら辛かったとはいえ、自分が晃夜に薄情なことをした事実は消せないのだ。
晃夜が長い間自分を忘れず大切に思ってくれていたことに、身を切られるようだ。そして、晃夜への愛しさが溢れ出てしまいそうで、胸が痛い。
こんなに好きなのに、この気持ちが家族の愛情に変化する日は、いつか訪れるのだろうか。きっと晃夜のスーツの肩には、眞昼の涙の染みが広がっている。それでも顔を上げられなかった。
「保高……こっちに来て」
晃夜に手を引っ張られ、眞昼は涙を拭いながらついていく。ダイニングの横にある二人がけのソファーに並んで座った。肩を抱かれ、晃夜が顔を覗き込むのがわかったが、顔を上げられない。
「前にさ、保高言ってくれただろ。俺に、いてくれないと困るって」
あの時は自分の気持ちにまだ気づいてなくて、でもきっと、自覚がなかっただけだ。
「他の誰かじゃなく、俺にいて欲しいって」
とっくに晃夜に気持ちを持っていかれてた。
「すごく、嬉しかった。俺が一番求めてたことだから。なあ、……なんでそんなに泣くんだよ」
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