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心配そうな声の中に、からかうような色が僅かに含まれている。
「おま、お前が泣かしてんだろ!」
「……保高」
優しく囁かれ、髪を撫でられ、体が震えた。好きな相手にされて、嬉しくないわけがない。
けれど、晃夜のこの行為は家族の親愛からくるものだ。決して恋愛感情じゃない。そんなのは当たり前だ。
ここに居たいのに、同時に逃げ出したくなる。
――好きだ。柊崎が、好きだ
愛しくてせつなくて、胸が収縮するように痛くなる。
――でも、今だけ、今だけだから
自分に言い訳する様に、眞昼は頬を濡らしたまま、晃夜にきつく抱きついた。
「やっと長年の望みが、保高を取り戻すことが叶った。……本当に良かった」
背中に晃夜の手の平を感じる。いつもは冷たいのに、やけに熱をもっていた。せつなさが加速する。
「もう少し、こうしていてくれ」
「うん……」
眞昼は恋心を押し込めた。
――好きだ、好きだ、おまえが、好きなんだ
叫び出したいほどの恋情を胸の内に精一杯吐き出し、眞昼は晃夜の腕の中で涙を流し続けた。
好きだと繰り返し、呟きながら。
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