12 会えない日々

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12 会えない日々

 まるで嵐のような一日だった。  幼いころから会いたくて捜していた兄弟が、晃夜だった。しかも、兄ではなく弟。――この数か月一緒にいたのに、まさか晃夜が血を分けた双子の弟だなんて、どうしたって予想がつかなかった。  四歳児の記憶などあてにならないと身をもって知ることになるとは。  せめて双子だということ、兄ではなくて弟だということを母が教えてくれてさえいればよかったのだ。すべては今さらなのだが、くり返し疑問ばかりが浮かんでくる。  まさに青天の霹靂とも言える体験の翌日でも、日常は変わることなく朝が来て、いつものように出勤するための支度をする。  眞昼は鏡の前に立ってネクタイを絞めた。鏡に映る自分は、昨日とまったく同じだけど、同じじゃない。弟と父親との再会を果たした自分だ。  ――そうだ、家族に十七年ぶりに会えた。血を分けた人間が、二人も増えたんだ  その事実は、眞昼の胸をぽかぽかと温かくするのだった。  昨夜は、深夜まで晃夜といろんなことを語り合って過ごした。母のマンションを出てから、ずっと二人は触れ合っていた。手を繋いで、肩を抱き合い、きつく抱きしめられた。晃夜は、眞昼を愛しげにじっと見つめてくれた。  ――でもそれは兄弟としての親愛の情で、恋人に対するものではない。それでも、わかっていても、嬉しかった。天に昇るような心地だった。  お互い気持ちが盛り上がっていたから、もしかしたら泊まっていくかもしれないと期待したけれど、晃夜はあっさり自分の部屋へ帰っていった。そのあと晃夜の部屋に誘われることもなかった。  
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