12 会えない日々

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 ――いやでも、あいつと一緒に平常心で眠れるわけないんだけど……    晃夜と同じ部屋で、隣でなんて、絶対眠れるわけがない。  昨夜、間近でじっと見つめられドキドキして、いっそ想いを告げてしまいたいという衝動に駆られ、必死に押さえ込んだ。  ――ようやく兄弟に再会できたってのに、気持ちのアップダウンが激しいな、俺……  それはそうだろう。晃夜はずっと捜していた温かい手の持ち主で、同時に好きな相手なのだ。  嬉しさと切なさが、親愛と恋情の間を行ったりきたりでとにかく忙しい。なにもしていないのに心身の疲労感が半端ない。  朝食用のトーストを焼こうと眞昼は食パンを取り出した。だが、胃に隙間を感じなかった。冷蔵庫を覗くと、買い置きのチーズがひと欠片あった。それを口に放り込み、コーヒーに温めた牛乳をたっぷり入れてすする。  とにかく、気分がどうでも仕事は待ってくれない。眞昼は気持ちを切り替えるべく、「よし!」と声を出し無理やり気合を入れた。  晃夜は、今日一日外出のようだ。晃夜が面倒を見ていた新人は自席に座っていたから、別件で動いているのかもしれない。  入社時に、会社の概要など組織についての説明や研修を受けたが、正直よくわかっていない。現時点の眞昼は、自分が関わる業務だけでいっぱいいっぱいなのだ。他の同僚達の業務内容に関しては見当もつかなかった。  眞昼はデスクの下に鞄を置き、無人の晃夜のデスクを見た。先週、テスクトップに向けられた真剣な横顔を思い浮かべる。
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