0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
二人連れの客
俺はタクシードライバーの仕事をしている。
以前、流しで道を走っていたら、二人連れの男性客が手を上げて車を停めた。
後部座席の扉を開け、二人が乗り込むのを待って行先を尋ねる。それに片方はすぐ答えたが、もう片方は口を開かない。だから、向かう先は二人一緒でいいのかと確認したら、行先を口にした客が一瞬で青ざめ、転げ出るように車を下りた。ちなみにもう一人の姿は、その一瞬の間に車中から消えていた。
なんとも不可解で背筋が冷たくなるその記憶が甦ったのは、今、あの時とほぼ同じ状況に直面しているせいだろう。
道端にいる二人連れの男性客。その片方にうっすらと見覚えがある。
間違いない。あの日、タクシーから飛び出すように逃げた客だ。
今日も男性客は、あの時同様に二人連れ。
…今回は、連れの男性も生身の人間であってくれますように。
二人連れの客…完
最初のコメントを投稿しよう!