文殊

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 もうすぐ札幌中央山高校は文化祭。  放課後、部室になっている多目的教室の中ではある話し合いが行われていた。 「では、今度の我が部のイラストテーマですが……どうしよかー」  三年生、南田緑の、後半だけ緊張感の無い呼び掛けがなされた。  天然パーマがよく似合う緑は、ボーイッシュな女子部長である。  ここはイラストレーション部。  毎年の文化祭には、厚めのイラストボードと呼ばれるものに、各々が好きなカラー画材を用いて成果を披露して展示するのが伝統なのだが、そのテーマ決めは毎年難航する。 「部長ー、無難に好きなアニメ、漫画は?」  髪を二つに縛った二年の二見が真っ先に答える。 「楽だけどねー、なんかもっとこう、無い?」 「じゃあゲーム!」  同じじゃーん、と二見に周りの突っ込みが入る。  緑は少し困ったような顔をする。  結局のところ、ゲーム漫画アニメ好きが部員に多いのでこうなるのも不思議ではないのだが、それではさすがに面白く無い。
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