文殊

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 う~ん、と静かになった中から、小太り男子の丸山が思い付きで言った。 「やっぱこの前流行った不倫でしょー」  一瞬の間を置いて緑が「マルヤマンのバツヤマンな冗談はさておきねー」と愛のある返しをしたので、丸山も変顔で返した。  窓の外では北風が茶色く変わった葉を飛ばしている。 「じゃあ、少し時間置きまーす。個人個人で話して、10分後にまたみんなで話し合いしよー」  なかなか良い案が出ないので緑が提案した。自然と小分けになったグループ内でどうするどうすると話が始まる。 「緑は何かある?」  近寄ってきて話しかけたのは眼鏡にロングヘアーの吉野。同じ三年でよく話す。 「私は今年こそメカが描きたいよー。やっぱ戦う『ロボット』だね!」 「ふふ、好きだもんねぇ、本当に上手いし。そんなの描けるなんてさすが部長!」  よっ!というおだてポーズ。 「吉野は?」  問うと、顎に手を当てて考えるポーズを取る彼女だが、実はこの癖は既に答えが決まっている時に出るのである。 「私は『ファンタジー』!剣と魔法の世界、モンスターに不思議なもの!」 「吉野らしい夢見がちなテーマですなー」 「いいじゃん!童話の挿し絵みたいなイラストでもコミックイラストでもどっちでもいいし」  すると緑も一呼吸後、 「童話の挿し絵のようなロボットイラスト、面白いかもしれない」と言った。  話がずれている。
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