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「うん。ありがとう」
とても、素晴らしい朝だった。
「おはようございます。痛ましい事件が起きてしまいました。えー、まず最初に事件の被害者の皆様には心から御悔やみ申し上げます。警察は犯人逮捕に繋がる有力な情報提供者に懸賞金100万円を支払うと規定を定めた事を今朝発表しました。一刻も早く、犯人が逮捕される様、祈るばかりです」
都内でも有名な暴力団、榊組の組長、榊雅司は朝食を食べながらテレビを眺めていた。ちゃぶ台を家族3人で囲み、妻が作った和食を食らう。いつも通りの光景だった。
畳の居間に置かれたテレビは最新の大画面テレビ。3人は画面に釘付けになっていた。
着物を着た美魔女な妻と制服を着た容姿端麗な女子高生の娘に向かって、榊は煮物を咀嚼しながら口走る。
「懸賞金やてよ。えらい事になってきたな」
半笑いで言った榊とは正反対に、妻の茜は不安気な表情でテレビの方を向いたまま、
「これほんま恐いわぁ、はよ捕まらんと安心して外も歩かれへんやん」
娘の玲子は笑いながら言う。
「どうせすぐ捕まる」
榊は箸を止め、玲子の目を見て、
「アホお前、警察が犯人取り逃がしたせいでもう何処いってもたか分からんねんで?今頃、どこに隠れとることか」
茜の心配とは裏腹に、食事を進めながら笑顔で笑い飛ばす玲子。
「大丈夫やってー!」
「用心するに越した事無いよ?なにも六本木通り魔の犯人だけやなくて。玲子は私に似て美人なんやから」
すかさず笑いながら、榊のツッコミが入る。
「自分で言うなや」
茜はスルーして玲子に言う。
「物騒な世の中なんやし、スタンガンとか持ち歩いた方がええんとちゃう?」
玲子は箸を置いて、
「じわる…!そんな高校生おらんから!」
「おう玲子、買ったろか?」
「いらん!寺西さんが守ってくれるから!ごちそうさま!」
言いながら立ち上がる玲子。
「おう、気ぃ付けてな」
「真っ直ぐ帰っておいでよ」
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