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交差点の信号が赤になった。走っていた男子小学生も立ち止まり、歩道には信号を待つ人々が列を成した。 車が一斉に走り出し、周囲に騒音が増す。
心の底から精神を揺さぶる積み重なった苛立ちは彼の思考を行動に促した。もう、やるしかなかった。
ゆっくりと歩き出した彼は、腰の左右のウエストポーチから慎重に刃渡り10センチのナイフを両手で同時に取り出した。
通りすがり様に女子高生は目を疑った。あまりにも場違いに思えた2本の鋭利なナイフに戸惑いが駆け巡った。その場でそれを見ていた人、全員が全く同じ困惑に陥った。
しかし、異変に気付いた本能が体を動かすよりも速く、彼は右手のナイフを歩いていた女子高生の腹部に根元まで突き刺した。
「痛っ」
洩れたのは最後の声。薄い水色のシャツに真っ赤な血が広がった。周囲の人間達の喉から溢れた小さなどよめきが白昼の路上に脈打つ。
彼は女子高生が倒れる前に、続けて2本のナイフで繰り返し、若々しい肉体をズタズタに突き刺した。複数の裂傷痕から血が広がる。致命傷となった左胸の一撃の後に女子高生は地面に倒れ込んだ。僅か数秒の出来事だった。
偶然それを目撃した周囲の人々は絶句した。彼は人の命を殺めた余韻に浸ろうともせず、目の前で呆気にとられ立ち尽くしていた中年男の方に素早く間合いを詰め、その勢いで両目をナイフで抉り突いた。中年男の断末魔と周囲で叫ばれる悲鳴が重なる。通りは騒然となった。
「人殺しだっ!」
「警察っ!警察呼べっ!」
「救急車…!」
両目から引き抜かれたナイフ。彼は即座に、潰れた眼球を両手で押さえながら呻き蹲った中年男の頭頂部に2本同時に突き刺した。
血の涙を流しながら息絶えた中年男の頭に刺さったナイフは引き抜かれるや否や左右に素早く投げられた。
「ぐっ」
「うっ」
数メートル離れた位置で足を止めて事の一部始終を見物していた野次馬野郎二人の額に見事に突き刺さったナイフ。周囲で傍観していた人々は口々に悲鳴を上げながら彼から背を向けて一目散に駆け出した。
「ヤバイ逃げろ!!」
「逃げろっ!逃げろーっ!」
だがその時には既に彼はウエストポーチから出した別のナイフを投げ、次々とそれを逃げ出した人々の背中や後頭部に命中させた。
そして彼も走り出した。六本木通りに断末魔が飛び交った。
手当たり次第に彼は通行人を切り殺し、刺し殺し、突き殺した。
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