チャプター1

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歩道に乗り上げて急停車したパトカーから拳銃を構えた警官が二人飛び出した。 「武器を捨てろっ!!」 荒々しい口調で叫んだ若い男性警官の拳銃の銃口はしっかりと彼に向けられていた。 彼は怯む事無く、お得意のナイフ投げで瞬時に二人の警官の額に穴を空けた。 倒れる警官。しかしパトカーは、すぐにもう1台現場に到着した。先程のパトカーが停まった位置の隣に停車してからも、遠くからは複数のサイレンが聞こえ続けていた。 3人の男性警官がパトカーのドアを開ける前に彼は全速力で走り、地面に倒れている警官の額に刺さったナイフを引き抜き、拳銃を構えた警官が外に出た時にはもうそのナイフを投げて拳銃を握る手に命中させていた。 「うあっ」 拳銃がアスファルトの上に転がった。 「クソッ…!」 言いながら運転席から出てきた警官はすかさず彼に発砲した。銃声が轟いた。しかし、彼は引き金を引いたタイミングよりも速く身体を反らしてアスファルトに転がって受け身をとった。 「なんだコイツ…!」 焦った警官は再び彼を狙って3発続けて発砲したが、同じように銃弾をかわされてしまう。 中年のベテラン警官もパトカーの陰に身を潜めながら彼を狙って発砲したが、彼は素早い身のこなしで銃弾を避け続けた。 「うぐっ」 間合いを詰められたベテラン警官はナイフで喉を切り裂さかれた。喉を両手で押さえても出血は止まらない。 銃声が何発もけたたましく六本木の街に響き渡った。しかし彼は瞬時に死体となったベテラン警官を盾にして前方の警官が連発して撃った銃弾を凌いだ。そのまま死体を、弾切れになった拳銃を向けたままトリガーを引き続けた警官に向けて突き飛ばし、ぶつかって怯んだ隙に、彼は目にも止まらぬ速さで警官に近付き2本のナイフで滅多刺しにした。 「うおーっ!!」 背後から突進してきた警官が叫んだ。手から血を流しながらも拳を握りしめて彼に勇敢にも殴りかかった。だがその勇姿は報われなかった。警官の拳が彼の顔面に届く事は無く、彼の素早いせいけんづきが警官の前歯をへし折った。そして右フック、左フック。 殴打されながらも警官が歯を食い芝って打った右ストレートはサッとかわされ、がら空きになったボディに彼が両サイドのウエストポーチから出したナイフが連続して突き刺さる。 滅多刺しにされた警官は膝から崩れ落ちた。意識はまだあった。その血走った目は目の前の異常者を睨んでいた。
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