57人が本棚に入れています
本棚に追加
パーティー後、俺はあいつにホテルのロビーで待ってるようにラインを入れた。
しばらくすると、少しパーティーのためにおめかしをしたあいつが、ロビーに姿を現した。
俺はそのままホテルを出ると、人込みを避けるように少し遠回りしながら駅へ向かった。
あいつは少し俺の後を歩いてついてきた。
プレゼン後、初めて会話をするもんだから
何を話したらいいか悩んだが、
「…今日はよくやったな。」
…こんな普通の言葉しかでてこなかった。
情けない。
緊張しながらも、一生懸命発表するこいつの姿は、ほんとに誇らしく
そして…愛おしかった。
この気持ちは上司としての部下を思っての気持ちなのか。
はたまた親鳥がひよっこを思う親心のようなものなのか。
それとも…
立ち止まり振り返る。
背が低いお前が
少し下から俺を見上げた。
「賭け…覚えてるか?」
お前は少しビクつきながら頷いた。
きっと何言われるか内心ヒヤヒヤしているんだろうな。
「飯…今から少し付き合え。」
お前は目を大きく見開き、
ふんわり微笑んだ。
今日はもう少し一緒にいたいと思った。
自分のこの気持ち、
なんなのか確かめてみたかった。
あいつという籠に誘われた
秋から冬へ移り変わる
季節の出来事だった。
(籠 Fin.)
最初のコメントを投稿しよう!