ヒーロードリンク

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 高校三年の夏。ぼくは野球部に入ってずっと補欠だった。きのうの県大会でも、スタンドで応援した。きっと大きな試合のグラウンドに立つ機会もなく、卒業するのだろう。  野球部に入って二年三ヶ月、ぼくは死に物狂いで努力してきた。しかし、体格の壁はどうしても越えられなかった。ぼくの身長は百五十センチそこそこしかなく、とてもやせていた。成長期などなかったかのようだ。  県大会ではベスト4まで進んでいた。あと二回勝てば、初の甲子園出場だ。つぎの試合まで三日ある。ぼくはグラウンドに残り、ひとりランニングをしていた。試合に出るあてはなくても、練習は続けていた。そうすることしかできなかった。  金網ごしに見える、校舎の時計は午後七時前を指していた。  ぼくは走るのをやめ、水飲み場に向かった。汚れた足を洗っていると、背後から、声変わりしたドスのある声がかかった。 「おい、早川。いくら練習したって、背は伸びねえな」  二年生の林と前田だ。林はぼくより頭ふたつぶん大きく、体格もいい。前田はやせていたが、背はぼくよりずっと高い。二年生になって幅をきかせてきたふたりだ。  ぼくは無視して、足を洗いつづけた。 「こいつ、一度もレギュラーになったことないんだ。早川一郎。大リーグのイチローとは大違いだな。名前が泣いているって」  前田がおちょくった。  こんなやつら相手にする価値もない――ぼくは、ぐっとこらえた。
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