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「おい、いくら三年だからって、あいさつもできねえようなら、おれが教えてやるぞ」
林が、すごんで見せた。
「なんとか言えよ」と前田もからんでくる。
「聞いてんのか」
肩に大きな手がかかり、力まかせに振り向かされた。林に胸ぐらをつかまれ、持ち上げられた。林の顔がぐっと近づく。ぼくはやつの顔を思い切りにらみつけてやった。
「なんだ、その目は」
林に水飲み場に叩きつけられた。台座に腰がぶつかり、ぼくはうめき声をあげて、そのまま地面に尻をついた。
林と前田が見下げてくる。ぼくはじっと我慢した。ここで暴力事件を起こしたら、せっかくベスト?まで進んだのに、出場停止になるかもしれない。それだけはだめだ。
「先生、こっちです。早く」
ふいに聞こえた女子の声に、ぼくは顔を向けた。
私服の女生徒が、渡り廊下から校舎の奥に向かって、しきりに手招き、呼びかけている。
「やべえ。先公を呼びやがった」
林と前田は血相を変えて逃げだした。
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