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翌日、エースの橋本が闇討ちにあい、学校は大騒ぎになった。練習の帰り、覆面の男たちに襲われ、手首を骨折したんだ。
チームは一年生の橋本ひとりが支えていたと言っていい。この新入生の投手力によって、ベスト4の快挙を成し遂げていた。
ぼくは部室に入ると、誰もいないのを確認して、カバンからボトルを取り出してみた。赤い液体が揺れているのが不気味だ。
ぼくは、水木に言われたとおり、一息に飲み干した。とたんに体が震えだした。のどを固いものが下っていく。それが体の芯で爆発した。全身にエネルギーがみちあふれた。
足音に我に返った。
振り向くと、窓が少し開いていた。部室と塀のあいだを誰かが走っていく。ぼくは不審に思い、眉をひそめた。
グラウンドに出ると、監督がベンチで頭を抱えていた。
「ぼくに投げさせてください」
監督が顔を上げた。ぼくを見上げ、意外そうな顔をした。
「おまえ、投げれるのか?」
ぼくがうなずき、監督は捕手の田口を呼んだ。
生まれてはじめて、正式にピッチャーマウンドに立った。かつて投手をした経験はなかったが、内なる力がぼくに自信を与えた。
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