ヒーロードリンク

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 部員が見守るなか、第一球を放った。  ボールは矢のように飛び、まさにミットを射抜いた。田口の大きな体が後方に押され、ボールを受け止めると同時に、その場に尻をついた。  グラウンドに沈黙が落ちた。部員の視線が集中していた。そのなかに瞳の熱い眼差しもあった。ぼくは瞳に、にこっと笑って見せた。  とたんに歓声があがった。部員のみんなが駆け寄り、その瞬間から、ぼくは新しいエースになった。  帰りはひどく疲れた。薬の効果が切れたらしく、重い疲労感が体を押しつぶした。瞳といっしょに下校したが、ぼくはほとんど彼女にもたれかかるようだった。 「見直したわ。とてもかっこよかった」  瞳が、あこがれの視線を向ける。  ぼくの足がよろけ、瞳が慌ててぼくの体を支えた。互いの顔が近づいた。瞳が見つめてくる。彼女が目を閉じ、ぼくらは唇を合わせた。夜風が瞳の髪をさらい、清潔な消毒薬の匂いがする。  彼女は保健委員だったなと、そんなことが頭をよぎった。  準決勝が始まった。試合開始のブザーがなり、ぼくはエースとしてマウンドに立った。薬は試合開始直前にトイレで飲んだ。  相手チームはぼくの登板に、怪訝な表情を浮かべていた。ぼくに関するデータがまったくなかったからだ。
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