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そのあとぼくは病院に運ばれ、急激な疲労だと診断された。一日入院すると、体調は回復した。薬の副作用ではと、ぼくは不安になった。それを水木に報告すると、しばらくは服用しないほうがいいと注意された。
決勝戦の前日、軽いメニューをこなして練習を終えた。ぼくは瞳といっしょに学校を出た。
校門のところで、林と前田が他校の生徒と話していた。ぼくはハッとした。その相手が決勝でぶつかる学校の怪物打者の橘だとわかったからだ。
林と前田は、あれから学校の裏でタバコを吸っているのを見つかり、退学になっていた。ふたりはあからさまにぼくを無視し、橘をうながしてその場を立ち去った。
初めて薬を飲んだ日、林たちが部室の窓からのぞいていたんじゃないか、そんな疑いをぼくはいだいた。
ついに決勝戦の日が来た。試合は午後一時からで、ぼくたちのチームは午前中のうちに球場に入っていた。橋本の手首はひびが入っていて、とても投げられる状態でない。ぼくが先発すると決まった。
あの薬は前もって水木にもらっておいた。飲みすぎると危険だからと、一本ずつしかくれない。試合直前に飲むつもりで、薬は控え室のバッグにしまっておいた。
午前中はグラウンドに出て、軽いアップをした。正午を過ぎ、太陽はぼくらの頭上から激しく照りつけてくる。体から汗が滝のようにあふれだす。スポーツドリンクが足りなくなりそうで、監督は瞳に買いに行かせた。
ぼくは汗をふこうとして、ハンカチを控え室に忘れてきたと気づいた。監督にことわり、グラウンドから建物に入った。控え室は廊下の先の、曲がり角の手前にあった。
控え室のドアを開けようとすると、勝手に開いた。なかから出てきたのは前田だった。あきらかに、しまった、という顔をして、あわてて逃げようとする。
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