王子の逆襲

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人気のない誰もいない校舎―― 私は祐と向き合っていた。 愛「…祐……私……」 どう言ったらいいのか、どう言って彼に理解ってもらおうか私は考えていた。 力を好きになった私。 これからもずっと彼と一緒にいたいと願っている気持ちを… 祐との未来はもう考えることなんてできないんだって。 祐「…愛梨…覚えてる?将来さ、俺のお嫁さんになるんだっていつも言ってたよね?」 (…祐の……お嫁さん…?) 私は幼い頃、彼のお母さんにいつも言っていた。 『祐のお嫁さんになる』 そしてその度に祐のお母さんは『愛梨ちゃんはフィアンセね。じゃぁ待ってるわね。』と言ってくれていたのが鮮明に記憶の中にある。 (でも…あれは…) 愛「祐…それは昔の……子供の時のことで…今は…」 祐「今は……『力の』?」 愛「そ…そーじゃなくって……そんなのは今は全然考えられなくって…」 今はお嫁さんとか、結婚とかそういのはまだ全然考えられない。 ただ、離れている力と一緒に過ごす時間を大切にしていきたい。 先のことなんて今は分からなくて―― 祐「俺は…愛梨と……ってずっと思ってたよ。だから迎えにきたんだ。」 (……祐……) 祐は真剣な眼差しで私を見つめていた。 愛「…ごめん。でも…あの時は本当に好きだった……けどね…っ…」 祐「で……今は力が好き?」 愛「…す…好きだよ。私……力が好き…力が好きなのっ。」 祐の目をまっすぐに見据え、私は気持ちを伝えた。 これが今の私の気持ち。 祐ではなくて今は力が好きなんだって。 一緒にいたいのは力なんだよって。 祐は驚きを隠せない顔を私に向けていた。 そして次の瞬間、目を細めたかと思うと私を見据え、 祐「俺を……こんなに本気にさせておいて?」 ……ドクンッ…… 祐の瞳に捕えられた。 その瞳から伝わる彼の想い―― 彼のその想いを思いっきり刻み込まれた気がした―――
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