王子の逆襲

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気がつくと外は更に暗くなってきているようで、教室内は薄暗い状態になっていた。 祐「愛梨は勘違いしてんだよ。」 愛「勘違い?」 祐「愛梨が力を好きになったのは、きっと『淋しさ』からだよ。俺と会えないっていうその淋しさを力で埋めてるだけの……今はその延長なんじゃないのかな。」 (…祐……違うよ……それは違う。) 力は祐が転校するって決まってからずっと私を支えてくれていた。 私がツラくてどうしようもないトキだけじゃなく、それ以外の時だって彼はずっと私の傍で寄り添っていてくれた。 時には冗談言って笑わせてくれて―― それがどれだけ私の心を癒していったか分からない。 今なら分かる。 それは彼だからできた。 力だから私の心を癒すことができたんだって。 当然のように私はそんな彼の傍にいて、彼の気持ちに気づかないまま過ごしてきたけど、でも、いつの間にか私の中で何かが変わっていっていた。 彼に対する想いが、彼の存在が、祐よりも大きく深くなっていた。 今では彼がいないなんて考えられない。 きっと私は『恋する』って気持ちじゃなくって『愛する』って言う気持ちを知ったんだと思う。 そしてそんな愛する彼の為に私が今できるのは―― 私は祐を見据えた。 愛「力じゃ…ないの。私が力に好きだって告白したの。」 祐「…えっ…」 愛「私が力のことを好きになっちゃったの。私が……力に好きだって気持ち…伝えたの…。」 残酷なことを言っているのは分かっている。 私を好きだと言ってくれてる人の目の前でこんなこと言うべきじゃないって。 でも、もう昔には戻れない。 力といたい気持ちを理解って欲しい。 愛「ごめん…祐。祐は卒業までって、三年間でって言ってたけど、私、そんなつもりないから…」 祐の気持ちに答えられないのに、祐に期待をもたせるようなことはもうしちゃダメだって思った。 けれど祐は、 祐「…愛梨……俺、聞かないよ?」 愛「え?」 祐「前にも言っただろ?今は聞かないって…」 祐の目からあの優しい笑みが消えていた。 愛「…祐…お願い…聞いて?…私は…」 祐「…聞かないって言ってんだろっ!!!!」 初めての祐の怒鳴り声。 そして今まで見たことのない怖い顔。 彼のその切れ長の目が更にその目を怖くさせ、私は立ちすくんで全く身動きがとれなくなっていた。
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