王子の逆襲

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愛「…ご…ごめん…」 涙が頬に伝う―― (…どうして……涙なんて出てるの?祐の方がツラいのに…) 祐「…ごめん……愛梨…」 その瞬間、祐は私をそっと抱き寄せた。 祐「…大きな声出してゴメン…」 その声は優しくていつもの祐の声だった。 祐「…でもね、愛梨……俺、愛梨を諦められないよ…」 祐は私の頭に顔を寄せた。 祐「…好きだから……愛梨が凄く好きだから……力に渡したくないんだ…」 祐の気持ちがその腕から痛いほど伝わってきた。 愛「…祐……遅いよ…」 もう遅すぎた。 何もかもが遅すぎた。 もっと早くにその言葉を祐の口から聞きたかった。 『好きだ』って…… 祐「…遅くなんてないよ。まだ引き返せるよ。少なくとも俺は、まだ愛梨のコト好きなんだから。それに…愛梨はまだ『俺の女』には変わりないんだから…」 (え?…『俺の女』…?) そのセリフに私は驚いた。 (……違う……私は…っ…) 愛「…祐……私、私は『祐の女』じゃない。私はもう力の…っ…」 言いかけて止めた言葉―― 何を言おうとしてるのだろうか。 『力の女』…って……? もう心もカラダも彼のものだって? そんなこと…… 祐「…愛梨……もしかして…力と?」 腕を緩めた祐が私の顔を覗き見る。 愛「…ぁ…」 ……ドクンッ…… 祐のその悲しそうな目に吸い込まれた私は息がうまくできそうもない。 (…言えない……言いたくなんかないよ…っ…) そんな私の表情で祐は全てを悟ってしまった。 祐「そっか……だからあんなキスができるんだ…?」 祐が悲しそうに笑った。 祐はあの木陰での私達のキスシーンを見ていた。 祐「まさか…とは思ってたけど、力が愛梨にもう手をつけてるなんて……思ってもみなかったよ…」 愛「祐…」 祐「そっかぁ…。だから愛梨はそんなに女らしくなったんだね。」 きっと、祐の中で生きていた私の記憶は、あの頃のまんまなのかもしれない。。 祐を追っかけコケて泣いてはまた追っかけて―― 『祐』『祐』ってしつこいくらい追いかけるあの日の私のまんま。 でも、季節を何度も重ねて私達は変わっていった。 もう…あの頃の私は…今はいない―――
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