王子の逆襲

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祐「…淋しかったんだよな…愛梨は…」 悲しさを否定するかのように祐は笑った。 (え?) 祐「…やっぱり、愛梨は勘違いしてるんだよ。愛梨は昔っから淋しがり屋だったろ?だから力に…」 愛「違うっ!」 私は彼の言葉を遮った。 絶対にそれは違うと思ったから。 淋しさだけで彼とそんな関係になったんじゃない。 彼が好きだから…私は…… 愛「…そんなつもりで力に抱かれたんじゃない…」 気がつくと大変なことを私は口にしていた。 慌てて手で口を塞いだけれど既に遅くて―― 自分から「抱かれた」なんて言ってしまうなんて━━ 祐「…愛梨……やっぱり…力に抱かれたんだ?」 愛「…ゆ…祐には……関係ない…」 祐「関係あるよ。だって愛梨は昔も今も俺の大切な人には変わりないんだから。力に抱かれたとしても……愛梨は俺の婚約者なんだからさ…」 (えっ?今なんて……?『婚約者』?) 祐「約束…したはずだよ?」   小さい頃、確かに私は周りのみんなに『祐と結婚する』って言ってた。 祐にも『結婚してね?』と言えば、彼も『仕方ないな』って。 でも、あれは…… 祐「子供の頃の約束だから『ナシ』なんて俺は考えてないよ?でないとここに俺が来た意味がないだろ?」 祐はあの言葉を信じて、ずっと私を想ってきたっていうのだろうか。 そんなのって…… 私も……あの日まで…… 彼が私を裏切った日…… 私じゃない違う女の人とキスしたあの時までは彼との永遠を信じていた。 絶対に祐は私を迎えにきてくれるんだって。 そして祐といつか結婚するんだって思っていた。 だけど…… 祐「…ごめん……ツラい思いさせたよな……俺……」 知らず知らずのうちに涙を零す私の頬に彼の指が触れた。 何度も何度もその指で流れる涙を祐は拭っていく――― 祐「…ずっと…傍にいられたら…よかったのに…。そしたら……愛梨は力に抱かれること…なかったのに…」 祐の声は震えていた。 (もし……祐が転校せずに私の傍にずっといてくれたら、私は今でも祐のことが好きだったのだろうか?そんなの分からない……でも今は、どんなに祐に優しくされても力を思い出してしまう私がいる。) 愛「…祐……私は力が好き…」
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