空白の時間

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――――――――――――――― ―――――――――――― ――――――――― 部室へ戻るとちょうど祐が部室から出てくるところだった。 崎「…あ!大泉、おまえ何処いたんだ?」 祐「あぁ、ちょっとトイレ。具合悪くてさ…」 (トイレ?…具合悪い?) とは言うものの顔色を見る限りではそんな風には見えない。 俺は違和感を感じていた。 恵「大泉クン…大丈夫?」 祐「すみません。荷物、気になってたんですが…」 崎「おまえなぁ、翔先輩、鍵返さねーと帰れねーの知ってんだろっ?何で言っていかないんだよ?」 祐「悪かったよ。急にきたもんだから…」 恵「まぁまぁ、仕方ないでしょ?それに愛ちゃん行方不明で探してたわけだし?バタバタしてたからどっちにしても帰れなかったでしょ?」 祐「え?…そうなんだ。愛梨…行方不明だったんだ?どこいっての?」 祐が水月に少し近寄ると覗き込むように見る。 (やっぱり二人は一緒じゃなかったのか?) 愛「…え…?…あ…うん…えっと校舎に忘れものを…」 祐「…そっか…忘れものね。なんか愛梨らしい…クスッ…」 そう言って彼女を見つめる祐の表情は王子スマイルという名をつけられるほど優しい。 俺の中でフツフツとしたものが沸いてくる―― 更に祐の質問が続く。 祐「何忘れたの?」 愛「…レポートの…用紙…」 祐「あぁ、宿題の…か。でもダメだよ?ひとりで校舎なんか入っちゃ。こんな休み中の校舎なんて危険だよ?もし誰か入ってきて襲われたらどうするの?」 一瞬、祐が俺に視線を向けたことに俺は気づいていた。 そして彼女の背丈に合わせるように屈んで顔を覗き込むと、 祐「愛梨はさ、もっと警戒心もたないとそのうち……誰かにさらわれちゃうよ?…クスッ…」 そう言って彼女の額を手の甲でコツンとした。 (…なっ……)
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