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とはいえ、俺は彼女を譲る気などさらさらない。
もちろん水月だって同じ気持ちのはずだ。
もう俺たちは未来へ向かって歩いている。
祐の入る隙なんてあるわけない。
力「…あのさ…祐、俺たちはな、おまえのいない間におまえの知らない強い絆ができてんだよ。おまえがどう思っているか俺は知んねーけど、簡単に引き離すことなんてできねーんだよ。」
俺は強い思いを込めて言った。
祐「へぇ…大した自信だな。昔とそういうところは全然変わってないよね。でも、俺は俺のやり方で愛梨を返してもらうつもりだよ。」
祐のやり方――
俺とは違う……俺にはできないあの王子のような笑み――
そしてその瞳に吸い込まれそうになる水月――
二人が見つめ合うところを見ているとあの幼い日の二人を思い出してしまう。
水月が祐を……祐が水月を想っていたあの幼い頃――
二人が惹かれ合っていたあの記憶が俺の中にも呼び戻されて、水月の傍にいるべきなのかという疑問が俺の中で駆け巡ることがある。
でも俺は――
力「悪りーけど、おまえに……いや、他の誰にも絶対に水月を渡すつもりねーからさ。」
そんな俺を祐は冷ややかな目でジッと見つめていたかと思うとフッと笑い、
祐「…絶対…ね。なんか強引だよね、力は。でもさ、俺はどうかと思うよ?そういうの。愛梨はね……もっと違う攻め方が好きだと俺は思うよ?」
(…えっ……)
その祐の俺を見る瞳に込められたものを俺は見逃さなかった。
(攻め方って……まさか…)
力「おまっ…どういう…」
祐「俺なら……力みたいな攻め方はしないなぁ。そんな攻め方しなくても俺は愛梨を十分満足させてやれるし…」
そう言って遠くにいる水月を見つめる祐の目は満足気な表情をしているようで――
力「…おまえ…ふざけんなよっ!」
俺は祐の胸倉を掴んだ。
だけど、その手はすぐに払われた。
祐「…やめなよ。誰かが見てたらマズいんじゃないの?甲子園かかってるんだよね?…クスッ…」
そう言って祐は俺の痛いところを突いてきた。
力「…おまえ…っ…」
祐「…愛梨はさ…もっと優しい方が好きなんじゃないかなぁ?俺が言えるのはこれくらいだね…クスッ…」
そういって意味深な発言をし、挑発するだけ挑発して祐は去っていった。
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