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由「そっか…」
私はあの教室での出来事を由利ちゃんに話した。
由「で、不意打ちにね…。けどさ、逃げられたんじゃない？」
由利ちゃんの言うように、確かに逃げようと思えば逃げられたのかもしれない。
だけど私はそれができなかった。
愛「…逃げなきゃいけないって思ったよ。でも、私……あんな…したことないようなキス…凄くて…びっくりしちゃって……あんな声で…あんな顔して見るんだもん……」
祐の妖艶な顔とその声は私を翻弄させた。
今まで体験したことのないキス。
祐がそんなキスをするということが衝撃的過ぎて、知らないうちに飲み込まれていた。
由「…愛……ひとつ聞くけど、正直に言って。あんた、祐に惹かれてんの？」
愛「…違うっ。私は力が好きなの。でも……」
由「でも？」
愛「祐がそれは違うって。私の……勘違いだって…」
由「勘違い？」
愛「うん。祐がいなくて淋しかったから……だから、私は力に惹かれたんだって。その…そういうコト…好きじゃなくても…できるって……だからっ…」
由利「…だから……祐に騙された？」
愛「え……騙された…？」
由「はぁ……あんた、祐の罠にハマったんだね。」
愛「…罠って……」
由利ちゃんは呆れた顔で私を見つめた。
由「あのさぁ、そんなわけないじゃん。あんたは祐に裏切られる前も後も私のこと……力への想い…応援してくれてたじゃん？あの卒業式の日だって…。思い出したくもないかもしんないけど、力の将来を考えて自分のカラダまで投げ出して危険な目に合ったんだろ？どこが淋しさだよ！？」
愛「でもね…由利ちゃん。私、祐のキスに感じてしまったの。すっごい優しいキス……カラダが震えてとまんなくて…。キスって……好きじゃない人とでも感じちゃうものなの？だから、私が力とえっちして感じちゃうのも、それは力じゃなくても……祐でも……私…おかしいのかな……きっとヘンなんだよ……もしかしたら、私…すっごいえっちなのかもしんない。……だから…誰でも……もしかしたら…」
由「愛っ！！！」
それまで冷静に話をしていた由利ちゃんが怒鳴った。
そして、私の手をギュッと握ると、
由「…んなわけないだろっ。好きじゃなきゃそんなことはできないよ。例えキスはできたとしても、それ以上は……あんたには絶対にできない！」
『好きじゃなきゃ…できない』
でも、祐は逆のコトを言っていた。
そして、それをあのキスで立証されてしまって――
愛「な…んで？よくわかんないよ……私…」
何が正しくて正しくないのか分からない。
そんな戸惑う私の顔に由利ちゃんはそっと触れた。
由「ねぇ、愛……ちょっと目閉じて？」
愛「目？」
由「そ。目……」
どういうことか分からない。
だけど、由利ちゃんの私を見るその目は真剣。
私は彼女の言うまま、目を閉じた。
暫く沈黙が続いた――…
そして、唇に生温かい感覚が――…
そっと目を開けると由利ちゃんが私にキスをしていた。
由「ほら……目、閉じて？」
私の唇にまた由利ちゃんの唇が重なる。
そのキスは凄く優しく、何度も方向を変えて重ねられる。
愛「…ん…んー…ぁ…」
いつの間にか私の胸の音が騒ぎ始める。
心臓がどうにかなりそうで思わず由利ちゃんの胸にしがみついた。
愛「…ふぁ……ぁ…ゆ……由利…ちゃん？」
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