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俺の目の前には水月。
そして、その隣には西野が座った。
俺と真は彼女たちの正面に座っている。
由「…さてと……じゃぁ…愛?」
西野はそう言って水月に話を促す。
だが、水月は西野に不安そうな顔を向けて――
愛「…由利ちゃん……私……」
由「…ん?厳しい?」
水月は何度かその口を動かそうとする。
だが、いざというときに躊躇い口が閉ざされてしまっている。
由「ん、やっぱ、私が言うよ。」
愛「…で…でもっ……」
由「あー…だってさ、あんた泣いたら風呂に入った意味がなくなるだろ?泣いた後だからって口実で力にまた風呂に連れていかれてもいけないしな。」
力「おま……どういう意味だよ!」
今日の西野はヤケに俺を挑発する。
(俺に何か恨みでもあんのか!?)
由「…じゃぁ、簡単に説明するよ。愛はね…」
愛「あ……ゆ…由利ちゃんっ…待って!」
由「…愛?」
愛「…やっぱり…私が言う…」
由「…大丈夫?私にだって言うのツラそうだったじゃん。」
(『私にだって』…って…それって俺は西野以下ってことかよ…)
愛「ううん。自分のことだから……ちゃんと言わないと……そうしないと……グスッ…」
いつの間にか、水月はまた思い出したように泣き出してしまった。
俺はそんな彼女を無償に抱きしめたくなり、席を立った。
が、西野は、俺に手の平を向け、『私に任せろ』と言わんばかりにストップをかける。
由「…ほら…そんなカンジだと言えないんじゃないの?」
愛「…ぅ……ん……で…でも、言うっ。言うからっ」
そういうと、溢れる涙を手の甲で必死で拭った。
それでもやっぱり俺はそんな彼女を見ていられない。
力「水月……」
愛「…っ……」
俺の声に彼女の体がビクついた。
そして、怯えるような目で俺を見つめるとふっと目を背けた。
(え……俺?…な……なんでだよ……)
由「…力……あのさ、マジで冷静になって聞いてやって欲しいんだよ。いつもより10倍…いや100倍かな。そういう覚悟がないとさ、愛もあんたもキツいだけだと思うからさ。」
冷静に…って……
キツい…って……
100倍って……何だよ?
俺はそんな西野の言葉に嫌な予感がした。
力「あのさ、俺も水月がこれだけ泣いてんのってよっぽどのことだって分かってるつもりだからさ。」
とはいえ、覚悟ができてるのかと言えば、嘘になる。
けど、彼女を受け止める覚悟をしなければどうにもならない。
力「…水月……俺、ちゃんと聞くよ。聞きてーよ。おまえの笑った顔、見てーからさっ」
彼女の笑顔を取り戻したい。
俺の傍で泣いている水月を放っておけるわけがない。
由「ほら…愛……大丈夫だって。力がキレそうになったら真だっているし、私があんたを守ってあげるから。」
(は?守るって……それは俺の役目じゃねーのか?!つか、俺から守るって一体どういう意味だよっ)
真「おまえさ、顔に出すぎ。その矢先からその表情じゃマズいだろ?ま…水月ちゃん、俺もいろいろ武道とかしてっから、力を止めることくらいできるから安心して。」
どうやら、俺が暴れるんじゃないかということが前提のようだ。
力「つか、俺は冷静で聞けるっての!」
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