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力「…で、何があったんだよ?」
愛「…えっと……あのね…」
ようやくその重い口を開き始めた彼女。
だが、隣で構えたように俺を見据える真と、斜め前から刺すような目で見る西野の目が気になる。
(ってか、超やりにくいんだけど…!?)
そんな二人の目を俺は気にしながらその彼女の言葉を待った。
愛「…力……私、謝らないといけないんだ……」
力「え?…は?おまえが俺に何を謝ることがあるんだよ?」
この休暇の最中、彼女は俺に謝るようなことをしただろうか。
俺の記憶では全然ないのだが――…
愛「…ごめん……私、嘘ついた…」
力「…嘘?」
愛「うん。」
力「嘘って……もしかして、今日のことで?」
愛「…うん……あのね、校舎…でのことなんだけど…」
校舎。
やはり校舎で何かあったのは間違いない。
嫌な予感がする。
だけど、動揺した顔を水月に見せるわけにはいかない。
俺は冷静さを保ちつつ彼女に話しかけた。
力「校舎でどうしたんだ?」
愛「…うん…校舎で……その……ホントは…その…」
そう言って俯く彼女。
それは言えない何かがあったということを示していた。
そして、その後に出てくる台詞の中に、ある人物の名前が出てくる可能性を予測してしまった。
力「…もしかして……祐と…いた?」
愛「…うん…」
祐のあの挑発から考えても、そうじゃないかと99%そう思っていた俺。
驚きはしなかったものの、やはりショックは隠せない。
力「…で、校舎で…何かあった…とか?」
愛「あのね、崎田クンに言われて宿題のレポート用紙を忘れてたことに気づいたから…取りに行ったの。たまたま、校舎の窓が開いてたからそこから入ったんだけど…」
力「けど、じゃぁ、なんで鍵まで閉めんだよ?」
愛「…え?…私……閉めてなんかないよ?」
その事実に俺は更に嫌な予感がした。
力「おまえ、祐と一緒に入ったんじゃねーの?」
愛「まさかっ…違うよ。ひとりで入ったんだから。それに、やっぱり何かあったら怖いし。だから窓、開けておいたはず…」
ってことは、水月が入ったのを確認した後、祐も校舎へ入り込んで俺達が中に入れないようにしたってことになる。
(祐のヤツ……なかなかふざけたマネしてくれんじゃねーか…)
力「そうか。疑ってごめんな? 俺、二人で一緒にって勘違いしてたわ。」
愛「ううん。それは誤解されても仕方ないよ。」
力「で、祐とは何処で会ったんだ?」
愛「あ…うん。教室で。そのレポート用紙を確認してたら、その…祐が入ってきて…」
力「じゃぁ、その用紙もってそのまま帰ってきたらそんなに時間はかからなかったはずだよな?」
自分でも段々と誘導尋問的な口調になってきているのが気になった俺は西野に視線を送った。
(ちょっとマズいか…?)
だが、GOサインが出ている?!
(…いいんだよな?この聞き方で…)
愛「…帰るつもりだったの。だけど…」
力「だけど…?」
愛「…ん……抱きしめられたの……」
!!!
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