恋の策略

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瞬間、その光景が目に浮かんだ俺の時間が止まった。 (だ…抱きしめられた……って……まじか…祐のヤロー…) あいつのことだから、また王子みたいな顔してしれっとして水月を抱き締めたに違いない。 そう思うと俺は居ても立っても居られなくなった。 そんな俺に目配せをする西野。 (冷静になれっ!) 分かってんだよ。 けど、俺の水月を…… しかも、人気のないところで…… それでも冷静にならないと、話は続けられない。 俺は高ぶる感情を必死で押し殺した。 力「…で……おまえ、どうしたわけ?」 愛「…その……振り払って離れたんだけど…」 力「『けど』?!」 愛「…あ…その……好きだって……」 !!! 祐の気持ちが水月にまだあるのは分かっていた。 だけど、危険な空間で、抱き締められた挙句、告られたとなると、水月が動揺しないわけがない。 力「…で、おまえ……何て言ったの?」 愛「私は…『力が好き』ってちゃんと言ったよ。」 力「え?」 こんなシリアスな時だというのに、俺はその彼女の言葉が嬉しすぎて仕方なかった。 (水月が祐の前で俺のコトを好きだって言ってくれるだなんて…) 真「すげーな、水月ちゃん。ってか、力…良かったなぁ?」 力「…あ…あぁ…」 俺になんて絶対に振り向くことはないと思っていた水月。 その彼女が俺のことを祐に好きだって言ってくれる、こんな日がくるとはあの当時は思いもしなかった。 真「…ん、じゃぁ、全然問題なくね?」 ところが次の瞬間、西野から恐ろしい言葉が出て―― 由「…まぁ、浮かれるのは勝手だけど、次は地獄行きかもよ?」 (はっ?地獄って…っ…)
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