恋の策略

7/13
前へ
/605ページ
次へ
一瞬、その雰囲気が『無』と化した―― もしかしたら……そんな気はしていた。 けど、実際に、水月の口から聞くと動揺は隠せない。 力「…なんで、そういうことになった?……無理矢理…された?」 俺は怒りに震える気持ちを抑え、水月に聞いた。 愛「…誤解だって…」 力「誤解?」 愛「私の力への想いは誤解なんだって。力と……その…えっちしたから……好きだって思い込んでるんじゃないかって…」 力「思い込み?…なんだよ、それ!?」 愛「祐が、もし転校しないでそのままいたら、私は力に惹かれてなかったんじゃないかって…」 確かに、祐がいたら、俺が水月に手を出せなかったのは事実だろう。 そして、今、俺を『好き』だと言ってくれる水月はいなかったのかもしれない。 けど、現実は――― 愛「だから、同じようなこと……自分と…祐と…してみたら本当の気持ちが分かるんじゃないかって言われて…」 力「だからって……」 愛「…む…ムリだって言ったのっ。好きじゃないのにできないって。そしたら祐は『好きじゃなくてもできる』って。力が…私を騙してるって。好きじゃなくても……感じるとか感じないとか……その……なんか…よくわかんないこと言い出して…」 力「…で、キスを迫ってきた?」 水月は震えるように頷く。 愛「…初めは…その…王子様みたいに手の甲だったんだけど……だんだん、私も…その…動けなくなっちゃって…」 ムカつくことにその時の様子が目に浮かぶ。 (あー……くっそぉー!祐のヤツっ…) 祐にとったら、水月を誘導することなんて簡単なこと。 彼女が好きだったあの瞳で、あの声で迫れば彼女は逃げたくても逃げられなかったのだろう。 完全に祐にヤラれた。 力「…で、俺のコト……水月は誤解だって…思った?」 愛「ううん……今は思わない。」 力「『今は』って?」 愛「ん……今は全然思わないよ。でも……最初は混乱しちゃってて…その…祐に『誤解』だって言われて、自分の気持ちがよくわかんなくなって……私、バカだから祐の…その…あのキス……感じちゃって…」 (…水月が……祐のキスに感じた……?) 力「…感じたって……おまえっ…」 由「真、抑えろっ!」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加