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部活顧問の坂田に入場許可をもらった俺達。
部室で着替えを済ませて出てくると、真が崎田と話していた。
崎「力!真がいるじゃないか!来るなら言ってくれたらいいのにさ。」
中学の頃、部活で軟式をしていた時、崎田はショート、真はセカンドを守っていた。
お互いを上手くフォローし合えるいい野球仲間だった二人。
久しぶりの再会に何やら盛り上がっているようだ。
真「崎田、今日から400だってな。まぁ、これでも力は中学ん時、全国覇者だからな。アテにしてもいいかもしんねーぜ?」
力「おいっ……『一応』とか『アテ』とかなんだよ、それ?」
真は全国を制するということがどういうことか理解っているのだろうか。
当時、俺的には陰でハンパじゃない努力をしていたつもりだ。
まぁ、それも水月がいたからこそではあるのだが。
崎「…いや、やっぱ、力は凄いと俺は思うよ。陸上もだけど、野球にしたって中途半端じゃないしな。しかも、力の球、あれはちょっとやそっとのものじゃないわ。あ……もしかして、真も力の球受けた?」
真「あぁ。今朝、ちょっとキャッチボールの時に構えたけどさぁ、それが全く捕れなくってさー…わはは…」
今朝、俺は久しぶりに真と裏庭でキャッチボールをした。
これは水月には秘密。
彼女には俺が陰で努力していることはあまり知られたくない。
俺が頑張ることで下手にいろいろ気を遣わせたくないというのがあるから。
それなのに、真が今朝うっかり口を滑らしそうになって――…
キャッチボールをしていた時に真には俺がピッチャーに転向したことは伝えていた。
すると、真は俺の球を取ってみたいと言い出して――
力「ほらな?やっぱ崎田しかいねーんだって。」
真「えっ?おまえ、あの球捕れたわけ?」
崎「…なんとか…な。まぁ、力は手加減してたっぽいけど。」
崎田には俺が手を抜いていたことはどうやらバレていたらしい。
まぁ、本気で投げると何かあった時にお互い困るだろうから7~8割程度で留めておいた。
力「あぁ…まぁな…。あのくらいの球だと甲子園ではバンバン打たれちまうからな。もうちょっと急速上げて重くしねーと全国では通用しねーかなぁ。」
俺の球は確かに速いらしい。
それは監督にも太鼓判押されてるくらいだから確かだ。
だが、俺的に言うと、甲子園で優勝する為には今のままではまだ全然通用しないと思っている。
それに俺は適当に勝つのは嫌いだ。
どうせ勝つなら決勝で『完封』して勝ちたい。
真「なるほど。だから、水月ちゃんに協力を要請か?」
崎「…要請って?」
真「実はな、力のヤツさぁ…」
力「ちょ……おまえっ、余計なコト言うなって!」
真「え?なんでだよー」
崎田には俺は硬派と思われているはず。
そして崎田自身もかなり硬派で恋愛に奥手。
そんな崎田にその『要請』について話すのは危険過ぎる。
刺激強すぎ。
このGW中、俺が水月と一緒に過ごして毎日のようにエロいコトをしているのがバレたらどんな顔をされるか。
崎田の中では俺のイメージはかなりいいはずなのに、崩されては困る。
真「別にいいんじゃね?いずれ分かることなのにさー…おまえが毎晩、水月ちゃんと…うぐぐ…」
俺は急いで真の口を手で塞ぐとヘッドロックをかけた。
真「…ったたた……ちょ……いてぇ……」
その時だった。
由「ちょっとぉー…私のかわいい『真』に何するのさっ?」
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