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認められるわけがない。
馬鹿らしいにも程がある。
俺は『結婚』というのはお互いを想い合う気持ちが全てだと思っている。
結婚となると、その後ずっとその人と長い時間を過ごしていくことになる。
気持ちがないのにやってなんかいけるはずがない。
祐は俺に向き合うと真剣な眼差しで俺を見据えた。
祐「…力……俺と愛梨は運命なんだ。切れない糸で結ばれてるんだよ。いくら力が愛梨を好きでも、結局は俺と結ばれる運命なんだよ。だから早いうちに諦め……」
力「……冗談じゃねーぞっ!!!」
…グイッ……
気がつくと俺は祐の胸ぐらを掴んでいた。
力「何が運命だ!ふざけんなっ!」
絶対に水月は渡さない。
そんなクソみたいな運命なんかに翻弄されるほど俺たちの仲は軟なものじゃない。
俺は祐睨みつけた。
祐「…離せよ……」
そう冷静に言って、祐は俺のその掴んだ腕を払いのけた。
祐「…力……俺もあまりこういう仕方って好きじゃない。けど、祖父さんはもうそのつもりでいるんだ。親友との約束だからな。俺の18の誕生日には正式に大泉グループの後継者として俺を、そして、その婚約者の発表を公式にするつもりでいるんだ。それがどういう意味かわかるか?」
俺は呆然とした。
大泉グループの後継者の発表とその婚約発表は既にもう日程まで決まっているというのか?
祐の誕生日は確か5月。
だとしたら高校卒業前の三年時にはその発表がなされるということになる。
つまりそれは、あと約一年後。
(…嘘…だろ…っ…)
祐「傷つくのは愛梨なんだよ。俺はできれば愛梨を傷つけたくない…」
そんな発表じゃなくても、その祖父さん同士の勝手な約束のことだけでも十分、水月は傷つくだろう。
それを大々的に公式発表としてやるってことになると――
(…そんなこと……絶対にさせられねぇ!)
力「おまえ、自分のやろうとしてることが水月を傷つけることになるってこと、気づかないのか?そんなコトして、おまえの傍で水月が笑い続けられるとでも思ってんのかよ!?」
祐は水月の笑顔を奪うつもりなのだろうか。
まだ彼女のことを想っているのならこんな酷いことできるはずがない。
祐「でもね、力、それでも俺にはさ、愛梨しかいないから…」
そう言うと祐は水月の姿をまた愛おしそうに、そして切なさそうに見つめた。
祐は一体何を考えているのだろうか。
いくら水月を好きでも、そんなやり方はない。
俺の知っている祐はそんなヤツじゃなかったはず。
いや、もしかしたら祐は変わっていないのかもしれない。
むしろ、変わってしまったのは水月の方?
あの頃と変わらず彼女を想う気持ちがそうさせている?
そして再会した彼女に更に惹かれて――
祐「…力……俺はね、自分のチカラでもう一度、愛梨を振り向かせるよ。そんな祖父さんのチカラなんか借りずにね。だからこれからだって、今、力に言った事実は愛梨に言うつもりはないよ。けど、もし無理なら仕方ないけどね。」
それでも、無理ならやっぱ最終的にはその権力を使うってことには変わりない。
それなら俺は――…
力「…祐……言っておくけど、俺はどんなことがあっても水月をおまえに渡すつもりねーから!」
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