69人が本棚に入れています
本棚に追加
祐は困ったような顔で俺を見つめた。
祐「そう言うとは思ったよ。けど、愛梨のコトを本当に想うならさ、愛梨をギリギリまで手放さずに傍に置いておくのは酷だと俺は思うけど?」
力「どういう事だよ?」
祐「傷が深くならないうちに、俺に渡してくれた方が愛梨の傷が浅くて済むってことだよ。遅くなればなるほど、愛梨は傷つくだろ?」
水月が傷つくというならば、もうそんなものは遅いというもの。
そんな話、いつ耳に入ってきたって彼女は絶対に傷つく。
それに俺はそんな権力に屈するなんて嫌だ。
水月を祐に……大泉グループになんか絶対に渡したくない。
力「だから水月を渡すつもりねーって言ってんだろっ!」
もう手遅れだ。
もう俺と水月は引き離すことなんかできるわけがない。
たとえ、それが大泉グループだとしても俺は彼女を渡さない。
祐「そっか。じゃ、愛梨が傷つかないようにゆっくりと奪いとっていくのが良さそうだね?」
(奪い…取る?)
何を考えているのか分からないその祐の笑み。
力「…祐……おまえ……水月に今度なんかしたらタダじゃ済まさねーぞ!?」
祐「…クスッ……そんな甲子園目指して愛梨と離れた場所にいる力がどうやって愛梨を守れるっていうんだよ?」
力「なん…だと?」
祐「力が池川に帰ったらさ、俺、全力で愛梨に近づいていくつもりだから。」
祐が全力で水月の心を取り戻しにくる。
あの王子攻撃で――
けど、今の水月は……
力「祐、残念だけど、水月はおまえには絶対に落ちねーよ。」
落ちるわけない。
祐が攻めれば攻めるほど、水月は俺にその心を向かわせる。
水月はもう俺しか見えてないのだから――…
祐「っとに、大した自信だね。そういう自信過剰なトコロ相変わらずだよな?」
自信過剰ではない。
それは『確信』。
それくらい俺は彼女から想いを受け取っている。
そしてそんな彼女を信用している。
力「悪りーけど、水月が俺を想っている気持ちは自信あるからな!」
祐「…へぇ……なんか、県大会思い出すよ、それ。けどまぁ、その自信があの試合の時、本物になったわけだけどね。」
自信がなければ、野球投げ出して祐と対決しようなんて思わなかった。
まぁあの時は、俺は水月の心をなんとかしてやりたい一心だったのだが。
力「おまえ、ホント、諦め悪りーヤツだよな?」
あの試合で俺が勝ったというのに、祐はそれを認めず水月をいまだ諦めていない。
あれでカタがついたと思っていたのに甘かった。
祐「まぁ、今の俺なら、おまえに勝てると思うけどね…クスッ…」
耳を疑うようなセリフが飛んできた。
力「…今、なんつーた…?」
聞き間違いじゃなければ、俺に勝てるとか言ったような。
(コイツ……また俺にケンカ売ってきてるのか!?)
祐「なんだ。聞こえなかったのか。ん、もし今、力と400で競ったらさ、たぶん俺が勝つだろうって言ったんだよ。」
聞き間違いなどではなかった。
そして祐のその自信あり気な表情――
力「俺に敵うヤツなんかいるわけねーだろっ?」
俺が負けるわけない。
なんたって、俺の傍には水月がいるのだから。
彼女が傍にいるだけで、俺は誰にも負ける気がしない。
祐「ふぅん……自信あるんだな?」
力「当たり前だろっ」
そして直後、祐は驚くような提案をしてきた。
祐「だったら……俺と勝負してみる?」
最初のコメントを投稿しよう!