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甲子園は俺の憧れであり夢だった。
小さい頃からずっと憧れていたその場所――
ようやく、その俺の長年の夢が叶おうとしている。
俺が今まで頑張ってきたそれを発揮できる日がもうそこまで近づいてきている。
絶対にやり遂げたい。
本当は今年と来年、選手権を連覇をし、更にプロへの道も考えていた。
俺が早く一人前になれば、彼女を幸せにできるはずだと。
卒業後、彼女と一緒にいられる為にはそれが最短のルート。
だが、祐の話が本当ならば、タイムリミットはあと一年。
大泉グループという権力のある企業が絡むとなれば、否応なしに事が進む可能性も否定はできない。
そうなるとかなり厄介なことにもなりかねない。
けど、俺の未来に水月がいないってことになるとそれは何の意味もなくなる。
大々的な発表がなされ、手遅れになる前に、俺は何としてでもそれを食い止めなければないけない。
水月がいるから俺はここまで頑張ってこれた。
あいつだって祐よりも俺との未来の方を今は望んでいるはず。
だったら、俺がここで何をすればいいかなんて決まっている。
力「分かったよ。俺、おまえと同じ舞台に立ってやるよ。」
想定外だったのだろうか。
俺のその言葉に祐は少し驚いたようだった。
祐「…ホントに……やるつもりなのか?」
力「俺、売られたケンカは買う主義でね。」
祐「…そっか……ん、驚いた。力、案外、愛梨のコト本気だったんだね?」
白々しいそのセリフは更に俺を苛立たせた。
力「当たり前だ。俺はマジだっつの!水月はおまえには絶対に渡さねぇよ。」
跳躍の練習をする彼女の姿が俺の視界に入ってきた。
マットの上で後輩と笑い合う水月。
(水月……おまえが悲しむようなことなんかさせねーから…。俺がおまえの笑顔を守る…)
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