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沙「先輩、髪ボサボサですよ?」
愛「えっ?…そんなにヒドい?」
沙「ヒドいっていう……そんなレベルじゃ…」
私と沙希ちゃんは跳躍用マットの上で話をしていた。
沙「あーあー…これ、結びなおしした方が絶対いいですよ。外しますね?」
そう言いながら沙希ちゃんは私の結んでいたそのゴムをスルリと取り、髪を手ぐしでとき始めた。
沙「先輩どうします?またふたつに分けます?それとも中学んトキみたいにウサギちゃんヘアにします?」
髪の毛を両サイドからとって上でウサギのようにキュッと上げるヘア。
それは中学の時によくやっていた私の勝負スタイル。
普通にゴムで二つに分けるよりも、なんだか引き締まるから、何か大切なことがある日はいつもそのヘアで気合いを入れてた。
愛「…ウサギちゃんかぁ。でも、それってコドモっぽくない?」
もう高校生にもなって、そんなのをしていたらまた力に子供扱いされそうだ。
沙「そうですか?でも、先輩、一番似合ってると思いますけど?」
言うや否や、沙希ちゃんは私の髪の毛をそのウサギちゃんヘアにしていく――
愛「えっ?沙希ちゃん?ウサギにしてんの?
……サササッ……キュキュッ……ワサワサ……
そして、あっという間に沙希ちゃんは私をウサギちゃんヘアにしてしまった。
沙「…はいっ、出来上がりっ!先輩、こっち向いて?んー…やっぱり可愛いですっ!藤沢先輩もきっと喜ぶと思います……ん?」
突如、沙希ちゃんの目が大きく見開かれた。
愛「え?沙希ちゃん?どうしたの?」
沙「…先輩……それって……」
みるみるうちに沙希ちゃんの顔が真っ赤に染まっていく――
沙希ちゃんの視線の先は私の首元。
愛「あっ…っ…」
すっかり忘れていたその痕。
それは昨日、祐に付けられたキスマーク。
沙「先輩……藤沢先輩って…やっぱり独占欲強いんですね…」
幸いと言っていいのだろうか。
沙希ちゃんはそのキスマークを付けたのは力だと思っているようだ。
沙「あ……こっちにも……どれだけあるんだろ……」
そう言って沙希ちゃんは私に近寄りそれを覗き込む。
(あれ?祐が付けた痕ってそんなにあったっけ?)
沙「…3…4……5……グイッ……あぁ……こんなところにもー…」
沙希ちゃんは私のシャツをグイグイ引っ張ってシャツの中までも確認しようとしている。
愛「さ…沙希ちゃんっ…?」
私は慌てて沙希ちゃんから離れた。
沙「…先輩……最低でも6コはありましたよ?っていうか、藤沢先輩、どれだけ独占欲強いんですか!?」
それは力の付けた痕。
おそらく今朝、その行為の最中に付けられた痕のようだ。
(もう……力のバカ……部活あるのにどうしてこんなにいっぱい…?)
沙「まぁでも、中学の時から藤沢先輩ってホント水月先輩大好きオーラ出てましたからね。彼氏になったわけだし、独占欲強くて当たり前なのかなぁ…」
(だ…大好きオーラって…)
愛「そ…そう…なの?」
沙「え?気づいていなかったんですか?藤沢先輩、可哀そう…」
愛「さ…沙希ちゃんは力のコト、よく見てるね?」
沙「…えっ?あっ……二人って一緒にいるとかなり目立ってましたから…」
愛「…目立つ?」
その時だった。
翔「おまえら、いつまでサボってんだ?」
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