予兆

9/9
前へ
/605ページ
次へ
翔「はぁ?…っつーか、なんでオマエにそんなコト言われねーといけねーんだよ?これは愛梨と俺との問題で…」 由「は?あんた、頭おかしーんじゃないの?」 そして真クンも由利ちゃんに続いて先輩に食ってかかる。 真「…そうだよっ。水月ちゃんはなー、力の子供生むんだよ!」 その真クンの発言に私は冷や汗が出そうになった。 (ちょ…ちょっと……真クンってば…っ…) 翔「…何言ってんだか分かんねー……つか、バッカじゃねーの?」 真「バ…バカって……」 翔「あのさぁ、ジョークなんだよ、ジョーク!あんなコト日常茶飯事だよな?愛梨?」 (ジョーク!?) さっきまでのあの行為は冗談とは思えない。 それほどリアルに迫られていて私は危険を感じていたというのに。 愛「…ジョークって…」 翔「いつもやってることだろ?そもそも何でこんな外野にケンカ売られなきゃいけねーんだよっ」 愛「…外野って……先輩……そういう言い方……私の大切な友達なんですからっ」 自分のことはとにかく、大事な友達のことを批判なんてされたくない。 しかも、私のことを心配して助けようとしてくれたのに。 翔「へぇー…愛梨の大切な友達か。じゃぁ、俺のコト覚えておいてよ、お二人さん。俺、この学校の三年「河合翔」。趣味は『女を泣かせること』。俺に落ちない女は愛梨くらいじゃねーかな。ちなみに見てのとおり、愛梨とはちょっとした仲。まぁ、近々俺の女になるけどな…クスッ…」 機関銃のようにそう言うと先輩はニヤリと笑った。 真「…おっまえなー!水月ちゃんには力が…」 翔「あ?知るかよ…」 愛「ちょ…先輩、だから私は先輩とは付き合わないって……私には力がいるんです……えっ?」 ふと視界に入ってきた目を疑うようなその光景―― 愛「…力……?!」 遠くに離れているから会話は聞こえない。 だけど、どう見ても力が祐の胸ぐらを掴んでいて―― 真「…え?あいつら…何やってんだっ!?」 由「ヤバいね…」 私はマットを降りて駆け出した。 由「愛!行くなっ!!!」 由利ちゃんが私を追っかけてきてその足を止めた。 愛「…行かなきゃっ……」 由「…愛っ!あんたが行っても余計に拗れるだけだ!」 愛「だって、止めないと……力が祐を殴ったりでもしたら……」 選手権前のこんな大事な時に問題を起こさせたくなんかない。 あんな風に祐を掴んでいるということはおそらく私のコト。 迷惑なんてかけたくない。 いろんなコトが頭の中を過ぎり、私の胸は押し潰されそうになった。 由「ダメだ。とにかく、あんたは行くな。ん、真!アンタが行ってきて?」 真「ん、任せとけっ!水月ちゃん、心配すんな?大丈夫だって。力もバカじゃねーからさ。あれ以上のコトはしねーと思うよ?ん、行ってくる。」 そう言うと真クンは猛ダッシュで二人のいる方へと駆けていった。 由「心配しなくていいって。力はあんたを悲しませるようなことは絶対にしないからさ。それくらい分別ついてるよ。」 由利ちゃんはそう言うけれど、私はなんだか凄く嫌な予感がしていた。
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加