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水月に振り向いてもらいたくて、俺は野球を続けてきたってのが大きい。
元々、俺は野球が好きだった。
当時、水月の兄の洋太さん、そして祐もまた野球をしていたということもあり俺も始めた。
そうすることで必然的に彼女との接点もできる。
俺は彼女が気になっていたから近くでその屈託のない笑顔を見ていたかった。
真「そうか。でもまぁ、おまえ、なんやかんや言っても旅館の跡取りだもんな。」
俺には姉貴がいる。
だが、跡取りとして育てられたのは俺。
だから俺は幼少期からそれなりの育てられ方をした。
とはいえ、母さんからは好きなことをしていいと言われている。
それですることがなくなったら旅館に戻ればいいと言われているのだが…
力「まぁな。ん、そのうち水月は俺んちの旅館の女将になるんだし?」
真「気、早っ!!!」
彼女と結婚すれば、いずれ俺は跡取りとして旅館を継ぐことになる。
そうなると、水月は女将になる可能性大だ。
その女将業など彼女に務まるのかと思ったこともあったが、この前のお茶席での振舞いを見て、俺は『もしや?』と思った。
真「おまえ、ホントに水月ちゃんと結婚するつもりでいるんだな?」
力「当然。あいつが俺に振り向いてくれた時点で俺の嫁さんはあいつしかいねーよ。」
けど、水月にそんなことを言ったら絶対に引かれるだろう。
それに女将ったって、だいぶ先の話になると思うし、まだ話さなくてもいいと俺は思っている。
力「とりあえずさ、俺の人生にあいつがいねーなんて絶対にあり得ねーから…」
今は将来何を目指すかなんかってのより、誰に傍にいて欲しいかってのが俺の中では重要だ。
真「婚約破棄の為にとにかく走るってコトか……」
祐とのその隠れた黒い糸を何としてでも断ち切らないと俺達に未来はない。
その為にも俺は何を犠牲にしてでも走らなければならない。
そして、走るからには絶対に祐に勝つ。
いや、祐に勝つだけじゃなく、完全勝利の為にはインターハイ優勝。
しかし俺にはかなりのブランクがある。
それでも俺は何とかしなければならない。
真「けど、おまえ陸上から一年以上も離れてんのに勝算あんのかよ?」
力「さぁな……」
真「さぁな……って……」
中学の時とはまた400のレベルも上がってるだろうし。
とにかくやってみない分からない。
現段階の俺のレベルをとりあえず知っておく必要がある。
そこへタイミングよく崎田がトラックから戻ってきた。
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