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真「久しぶりだな、祐…」
祐「…え…?……あっ…あぁっ!真か?」
久しぶりの旧友との再会。
真も小学生の頃から野球をしていたということもあって祐と顔見知りだ。
真「相変わらず走るの速いみたいだな?」
祐「ん、どうだろ。まぁ、これ一本できたからね。」
転校後、祐はずっと陸上をしている。
そして、水月と中学の県大会で再会してからは更にその実力をつけてきた。
水月が祐に会う為に頑張っていたように、祐もまた彼女に会う為に…
真「…あのさ、久しぶりの再会で言うのも何だけど、水月ちゃんのこと、諦めてくんねーか?」
いきなりの真のそのセリフ。
祐は驚いたようだが、すぐに穏やかな表情に変えた。
祐「ん……意味が分からないけど…?」
真「は?人の女に手ェ出すとかおまえ趣味悪いぞ?水月ちゃんはな、もう力のもんなんだよ!おまえさぁ、水月ちゃんを捨てるようなマネしておいて今さらねーだろ!」
珍しく剣幕にケンカを吹っ掛ける真に俺はちょっと驚いていた。
そんな真に祐は一瞬、顔を歪めたが、すぐにその表情を緩ませ、
祐「…クスッ……そっか。真も勘違いしてんだな。あのさ、愛梨は元々俺のものだからさ、そういうこと言われるの、筋違いなんだよな…」
(元々俺の…もの?)
確かに以前はそうだったかもしれない。
けど今は俺と付き合っている。
婚約がどうとか知らないが、今さらそんなコト持ち出して言う方が筋違いだ。
真「何言ってんだよ。水月ちゃんはもう力といい仲なんだぜ?知ってんだろ?」
祐「…知ってるけど?だから…何?」
真「は?だからってっ…。おまえさぁ、今さらなんだよ。水月ちゃんがおまえのことでどれだけ悩んで泣いたのか分かってんのか?」
真もあの中学二年の時の県大会での出来事を知っている。
あの時、真も水月と同じクラスでその状況を目の当たりにしていた。
祐「あの時はさ、仕方なかったんだって。事情があったんだよ。愛梨を守るには突っ撥ねる必要があったから。けど、今は違うから…」
真「何が『今は違うから』だよ。もう遅いってんだよ!水月ちゃんが立ち直れたのは誰のおかげと思ってんだよ!?力のおかげなんだぞ?力がどれだけおまえのコトを考えながら、水月ちゃんの傍にいて、どれだけ彼女のコトを大事にしてきたか、おまえには分かんねーのかよ?!」
真の興奮度は更に増していく――
祐「それは感謝するよ。けど、別に俺は……頼んでないよ。」
真「は?なんだそれ…」
祐「あのさ、頼んでないことまでしたのは力だろ?俺の許婚を寝取ったわけだし?そんなコト頼んだ覚えないけど?」
真「寝取ったって…っ…おまえっ…」
今にも祐に飛びかかっていきそうな真。
それを察した崎田がすぐに真を制した。
崎「真、やめておけよ。こんなところでケンカにでもなったらマズいだろ?」
真「けどさ、そんな言い草…」
力「真、いいんだって。確かにあの時は俺が好きで水月の傍にいただけだからさ。けどまぁ、結果、水月が俺を好きだと言ってくれた。今は俺を求めてくれてるし、だからこそ俺は彼女を抱いたんだよ。それが現実だからさ…」
寝取ったと思うのならそれでも構わない。
けど、俺達は好きだからこそ愛し合ってるだけで、寝取るとかそういう気持ちでヤッたわけじゃない。
祐「まぁ、それでも愛梨は俺の『許婚』ってことには変わらないのも現実なんだけどね。」
真「…祐……おまえってヤツは……」
力「真…もういいって……」
真「けどっ…」
俺たちの知っている祐はもういない。
だとしたら、もう遠慮なんてしなくていい。
力「おまえには水月は渡さねーから…」
一年後のインターハイ――
俺がもう一度、祐を沈めれば問題ないのだろう。
かなりリスクがあるがやるしかない。
祐「まぁでも?そんな走りだと愛梨を返してもらえそうだけどね。今のその走りでは俺には絶対に敵わないよ?…クスッ…」
そう言って不敵な笑みを残して祐は去って行った。
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