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力が部室へ行った後、私もまた部室へ行き着替えを済ませた。
(…力……まだかなぁ…)
男子の部室の近くで彼を待っていると、そこに翔先輩が現れた。
翔「なんだ、いたのか。お疲れ。つか、さっきはまいった。ったく、おまえのダチってのは凶暴なヤツがホント多いなぁ…」
愛「普通です。先輩の冗談が過ぎるんですよ。どうしてまたあんなこと…」
翔「けど、おまえにキスしたかったのは事実だしなー…」
そういうと物欲しそうな目をして、自分の唇を触れながら私を見つめてくる。
愛「そんな顔してもダメです!私、キスもえっちも彼としかしないんで…ぁ…」
勢い余って口走ってしまった恥ずかしいセリフ。
言った後に気づいたけれど、もう後の祭り。
翔「そっかぁ…『セックス』もあいつとしかしねーんだー?」
その卑猥な言葉を先輩はワザと大きな声で言った。
私は慌ててグルリと周りを見回した。
幸い、辺りには誰もいなくて私はホッとした。
愛「あの……そんな言葉、フツーに使わないで下さい。」
翔「なんだよ、『えっち』も『セックス』も一緒だろ?今さら…それに、おまえだって藤沢と『セックス』しまくりなんだろっ!」
(ひぃー……!!!)
その声はフツーどころか、さっきより声が大きくなっているっ!?
愛「シーッ!と…とにかく私は力とだけなんですっ」
すると、先輩はニヤッと私を見て、
翔「けどなぁ…愛梨、世の中には男も女もゴマンといてな。ひょっとしたら藤沢よりもセックスの相性合うヤツっているかもしんねーと思うんだよな、俺はさぁ…」
愛「…あ……相性…?」
(えっちに相性?そんなコト、初めて聞いたような…)
翔「そう、相性。だから、こんな若いうちからさ、ひとりに決めるのはもったいないっていうか…。やっぱさぁ、いろんな相手とヤるのも経験じゃね?」
いろいろな人と経験?
そんな気持ちの悪いことなんてできない。
本当に心を許してる人じゃないとそんな恥ずかしいことできるわけがない。
愛「無理っ!絶対無理っ!」
翔「そっかぁ?もしかしたら藤沢とやるより数倍……いや、数百倍キモチイイヤツがいるかもしんねーぞ?」
そう言って先輩はニヤニヤしながら私を見る。
(数倍?…数百倍?あ……あり得ないっ!!あれ以上、感じすぎたら……私、おかしくなっちゃう…)
愛「あの……今ので、その…私は十分満足してるんで…っ…」
そう言って私は先輩から目を逸らした。
そんな私に先輩はずいっと近き、私の頬に手をあてると先輩の方を向かせ覗き込んで、
翔「…愛梨……俺、藤沢よりおまえを満足させる自信あるけど……ど?」
(『ど?』って………えぇぇ…?!)
そして、頬に触れていた指先をツツーっとそのまま唇までずらしていき、
翔「…試してみるか?」
私は先輩の胸をドーンと突き放した。
愛「も…もうっ…先輩っ、今日は冗談キツ過ぎますっ」
ホントに今日の先輩はどうかしている。
翔「…冗談ってこともねーんだけどなぁ…クスッ……まぁ、その気になったらいつでも付き合うから…」
愛「なりません!」
翔「…なってくれたらいいのにさぁ…クスッ…あ、そうだ……コレ、マットに忘れてたぞ?」
それは私の400用のバインダー。
坂田先生が作ってくれた個人のトレーニング内容が記載されているもの。
愛「あっ……忘れてた……」
翔「ホント、おまえはなんか抜けてんなー…」
そういうとそのバインダーでポンッと私の頭を軽く叩き、そのまま私につき出した。
愛「あ…ありがとうございますっ」
翔「それ……坂田に持っていかねーといけねーんだろ?」
愛「そうでした。私、行ってきますね?」
早くしないと力が部室から出てくる。
私は猛ダッシュで運動場を横切って教官室へと駆けていった。
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