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目を覚ますとそこは少し暗い場所――
(あれ?…え?ここは…どこ?)
その場所を確認しようと起き上がろうとすると、その人の声が聞こえた。
祐「…大丈夫?…愛梨…」
目の前には薄暗闇の中で祐が私を心配そうな顔で見つめていた。
愛「え?ここ……」
グルリと辺りを見回すと、そこは見慣れた場所……体育倉庫。
跳躍用マットなどをしまう倉庫だった。
愛「あれ?…私……」
どうしてこんなところにいるのか分からない。
記憶が……?
祐「…覚えてないんだ…?」
夢でも見ているのだろうか。
現実かどうか確かめる為に私はポカポカと頭を叩いてみた。
愛「…い…痛い……夢じゃない…?」
そんな私を祐はクスクス笑いながら見ている。
祐「…夢じゃないよ。…さっき、ラム酒入りのチョコで……」
愛「…ぁ……」
ようやく私は教官室で祐にもらったラム酒入りのチョコレートを食べたことを思い出した。
(そして、それを食べて……あれ?…記憶が……)
愛「…祐…どうして、ここに?」
教官室にいたはずなのに、なんでこんなところにいるのか不思議だった。
祐「保健室に行こうかと思ったんだけど、ほら、校舎は開いてないしさ。教官室から一番近い倉庫ならマットもあるし、ゆっくり寝かせてあげられるんじゃないかって…」
(…っていうことは、私、まさか……また……祐に……?)
愛「祐……もしかして……ここまで運んでくれたの?」
祐「…うん。」
愛「ごめんね…重かったよね?」
祐「全然。愛梨、軽いし…」
(軽い?おかしいなぁ……力はいっつも私のコト、重いって言うんだけど…)
祐「それにしても、愛梨ってホントまだまだコドモなんだね。あんなラム酒でまさか倒れるなんて思ってもみなかったよ…クスッ…」
愛「え……あ…あはは……」
思わず私もつられて自然と祐に笑顔を見せていた。
そんな私に祐は少し近づくと、そっと頭を撫でた。
祐「気分はどう?」
愛「あっ…うん……大丈夫だと思う…」
暗闇で見る祐のその笑みは妙に艶っぽい気がした。
考えてみたら祐とこんな場所に二人。
もしかするとこれはあまりいい状況ではないような……
祐から離れようと私は徐々に後退。
そんな微妙に離れていこうとする私を祐が見逃すはずもなく、
祐「…そんな怖がらなくても…」
愛「…怖がってなんか…ないよ…」
祐「じゃぁ、なんでそんなに逃げ腰なのかな?」
そういうと、さっき離れたはずの距離をまた縮め、私の顔を覗き込んだ。
愛「…祐っ……か…顔……近いっ…」
至近距離10センチあるかないかの距離。
(……き……危険過ぎるっ!)
祐「そっかなぁ……昨日の方が全然近かった気がするけどな…クスッ…」
そう言って妖艶なその顔で更に私に詰め寄る。
愛「…お願い…祐……私から離れて……」
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