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祐「けど……」
その瞬間、さっきまでの悪戯な表情だった祐が真顔になり、声のトーンが下がった。
祐「そのキスマークは余計だよ…」
祐は私のカラダに散りばめられた力の痕を見据えていた。
愛「あっ…やだ…」
私はその痕を必死で隠そうと手を動かした。
だけど、たくさんあり過ぎて隠しきれない。
祐「…昨日……力とできたんだ……」
不快感を露わにするようなその表情――
愛「…そっ…そんなの……祐には関係ない…っ…」
本当は力にあのキスのことなんて言いたくなかった。
祐のことで私は何年も彼の気持ちを傷つけてきた。
これ以上は傷つけたくない。
でも、黙っていることは私にとっても力にとっても傷つけ合うことで、それはお互いを信じていないということでもあると気づいた。
お互いを信じていれば、そんなことくらいじゃ私達の仲は絶対に崩れない。
祐「俺とキスしたこと……力に言った?」
愛「…言ったよ。でも力は許してくれた。さ…さっきのキスだって全然、平気なんだから!」
信じてる。
きっと、さっきのことだって力にちゃんと説明すれば、彼は理解ってくれる。
祐「そっかぁ。じゃぁ、今日はやっぱりキスくらいじゃダメってコトかな?」
そういうと、祐はマットの上に座る私へとにじり寄り、強引に私の腕を掴んでマットへ縫い付けた。
愛「…や…やだっ……祐…冗談だよね?」
薄暗闇でも祐の表情ははっきりと分かった。
初めてみる祐の『男』としての表情――
祐「力には……いつも強引に抱かれてんの?」
愛「…か…関係ないっ」
祐「俺はね……あまり強引なのは好きじゃないんだ……」
愛「だ…だったら、こんなの……ダメ…だよね? 」
祐「…ん……でも、愛梨は力のそういう強引なところに惹かれたんだろ?」
力はえっちをするトキ、凄く強引になる。
初めてのコトばかりするからどうしていいか分からなくて不安になるトキもある。
でも、私はそんな彼とのえっち……キライじゃない。
どうしてだか分からないけれど、全身全霊で愛してくれる力のそういう強引さに私は安心して身を委ねられている。
愛「…私…力のそういう強引なところ、嫌いじゃない…」
むしろ私は好きなのかもしれない。
彼のそんな愛し方が。
祐「そうなんだ…。だったら、俺も強引にしないといけないってことかな?」
愛「…え……」
マットに縫い付けられていた両腕はいつの間にか頭上へと引き上げられていた。
愛「…ゃ……見ないで……見ないで……」
力以外の男の人になんてこんな姿見せたことないのに。
耐えがたいその恥ずかしさに私は顔を背けた。
祐「どうして?…愛梨…凄く綺麗だよ。こんな…こんな綺麗なカラダ……なのに……力が触れたなんて許せないけどね。」
祐は私を射るように見つめた。
愛「…ぁ……祐……お願いっ…何もしないで…離して…っ…」
私は必死で抵抗していた。
だけど、祐は男の人。
私のチカラなんて敵うはずがなかった。
祐「…離して欲しい?」
祐のその言葉に私は必死で頭を縦に振った。
祐「じゃぁさ……俺のキスに応えて?」
愛「…そ…そんなの……」
できるわけがない。
キスに応えるということは、その人に委ねるということ。
気持ちがないのにそんなこと私にはできない。
祐「愛梨がちゃんと応えてくれたらこれ以上はもうしないけど?」
キスに応えればこれ以上のことはしないというのなら受け入れるしかないのだろうか。
でも、私は……
祐「どうしたの?やっぱり……できない?」
愛「…祐……なんでこんなコトするの?私が力のこと好きだって知ってるのに…」
何度も祐を拒んでも、祐は私を諦めようとしない。
そこまで私に執着したって私は絶対に祐に戻ることはないのに。
祐「…決まってるだろ?愛梨が好きだからだよ…」
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