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目を開けると無機質な色をした天井が見えた。
重いカラダを動かそうとするとカラダに掛けられていたジャージが音を立てる。
(……私……一体……)
祐「…気づいた?」
そっと髪を撫でるその手から伝わる温もりが徐々に現実へと引き戻していく。
愛「…ぁ……」
まだカラダに残る倦怠感。
祐が私に覚えさせたその感覚はまだ消えそうもなかった。
愛「…ぁ……」
知らず知らずのうちに溢れる涙――
ただ彼に申し訳なかった。
重いカラダをゆっくりと起こし、傍にあった服をひとつずつ集め、ようやく私はカラダにそれを身につけることができた。
そんな私の背中を祐は抱き締めた。
祐「…愛梨……これで分かっただろ?愛梨は勘違いしてるんだってこと…」
愛「…勘違い……?」
祐「愛梨はね、力とそういう関係になったからカラダが勝手に力を好きだと思い込んでるだけなんだよ。好きじゃなくてもできる…。その証拠にさっき力じゃない俺にめちゃくちゃ感じて濡れただろ?」
悔しいけれど、祐に言うとおり、私は祐に感じてしまった。
力にもされたことのないような初めての経験――
まさか、自分があんな風になるなんて思いもしなかった。
そういえば、翔先輩も言ってた。
世の中にはごまんと男の人がいて、相性ってものがあるのだとか。
彼よりも数倍、数百倍キモチイイ相手がいるかもしれないって。
それを証明されてしまったような気がした。
愛「だからといって私が祐のことを好きってことにはならないよ…」
翔先輩の言う相性論から言えば、祐とは凄く相性が良いのかもしれない。
でも、その行為をされている時に感じた私の想い。
力とするトキに感じられる安心感や幸せ感は存在しなかった。
祐「でもね、少なくとも俺達は何年もお互いを想い合ってたんだ。俺は愛梨のコト……ずっと好きだったよ。初めて出逢ったトキから…」
衝撃の言葉だった。
祐のことが好きだったトキに感じていた温度差。
祐よりも私の方が彼を好きで追いかけていた記憶――
(初めて出逢ったトキって……祐は…私のこと、そんな前から想ってくれていたというの?)
祐「…好きだった……俺にとって大切な……愛梨……おまえじゃないと俺はダメなんだ……」
背中から祐の温かさが伝わってくる。
その言葉が胸の奥に眠っていた置いてけぼりの私の心に深く突き刺さる。
愛「…祐……」
自然に零れる涙の意味が私には分からない。
そんな私の涙に祐が気づいた。
祐「…愛梨……」
私を覗き込む彼の顔はさっき見せた『男』の顔ではなかった。
そっと頬に触れると親指でその涙を拭ってくれた。
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