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祐「ゴメン…こんなコトするつもりはなかったんだ。けど信じたくなかった。愛梨がこんなにも力を想っているなんて…」
愛「…祐……」
祐「…たった……一年だよ?それで何年も想い合っていた俺と愛梨の気持ちをなかったことにされるなんて…。だから力と同じように、こういう関係になって愛梨に考えてもらいたかった……」
祐の気持ち……分からないわけじゃない。
私だって同じだった。
きっと一緒になれる日がくるとと信じて彼だけを見つめてその日を待っていたから。
けど、あの日、運命は悪戯をした。
それは、祐にとっては裏切りじゃなかったのかもしれない。
でも、あの日、あの瞬間、私は凄く傷ついた。
死んじゃいたいと思うくらいツラくて何も手につかなくって―――
そんな時に傍にいてくれたのは力だった。
あの時だけじゃない。
それまでだっていつも傍にいてくれたのは力だった。
そっと私に寄り添ってくれて、私の気持ちを凄く大切にしてくれて――
そんな彼の傍にいるのが私は心地よかった。
愛「…祐……違うよ。一年じゃないよ。少なくとも力は私のことを何年も前から見ててくれた…」
過去を振り返っていくと、思い当たるところがたくさんある。
祐が私に背を向けたあの瞬間から、いつも私を傍で支えてくれた力のことを私は大切な友達だと思っていた。
でも、いつの間にか私の中でそれが好きという感情へと変化していた。
力と過ごす時間は楽しかった。
凄く安心できて、何でも相談できる頼りがいのある人――
そんな人が近くにいたのに何年も力に惹かれなかったのは、祐への想いと約束があったから……ただそれだけが理由だったのかもしれない。
祐「…知ってたよ、力の気持ち。力がどれだけ愛梨を想っているかなんて。だから、おまえと離れるとき、何がって、一番、力の存在が気になったよ。いつか愛梨が力に惹かれるんじゃないかって…」
(祐は力の想いに気づいていたの?そんなのって……)
祐「ごめん……でも俺は諦められない。愛梨……俺を嫌いにならないで…」
愛「…祐………」
祐のその気持ちが痛いほど伝わってくる。
愛「……嫌いになんか……なれないよ。どんなにヒドいことされても、祐のこと……嫌いになれない……」
祐「愛梨…っ……」
祐の抱き締める腕にまたチカラが加わった。
(……祐………)
どうして彼との運命の赤い糸は切れてしまったんだろう。
あの出来事がなければ、私はこうしていることが当然で幸せのはずだった。
でも、今は悲しくて仕方がない。
だって、祐の腕の中にいればいるほど、力の顔が思い浮かんでくる。
(…力に……会いたい……)
愛「ごめん…でも…やっぱり祐には戻れない。…私……力が好きなの。凄く好きなの。力じゃないとダメな…ぁ…」
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