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藤沢はかなり気が強いし、妥協をしない男のようだ。
休みを利用して愛梨の400のコーチをしにきているのだが、さすが、練習のときは相手が彼女とあってもかなり厳しい。
しかし反面、練習外の休憩中は愛梨にかなり甘い。
そんな二人が部活の休憩中、トラック外の運動場の奥にある木陰でキスをしているのを俺は偶然にも目撃してしまった。
しかも恥じらいもなく、超長いキスを見せつけるように――…
翔「ったく、やってらんねぇ…」
俺はダウンを終えて部室の前へと帰ってきた。
するとその張本人の愛梨と崎田が何やら話しをしている。
話を聞くと、藤沢のことで浮かれていただろう愛梨が校舎内に宿題のレポート用紙を忘れてきたとか。
GW中とはいえ、どこか一ヵ所くらい空いていると思った俺は、冗談半分で校舎へ乗り込むように言ったら、あのバカは本当にあの後、乗り込んだ。
愛梨が行方不明になって約一時間が過ぎた頃、彼女は校舎から出てきた。
開いていた窓を見つけて乗り越えて入ったはいいが、そのまま鍵をかけて入り、なんと迷子になっていたという。
どうりで捜しても見つからないはずだ。
しかし、俺は見てしまっていた。
彼女が校舎から出てきた同じくらいの時間に大泉もまた校舎から出てきたのを。
愛梨のクラスのある校舎は三棟ある中の真ん中の二棟。
校舎は全て渡り廊下で繋がっているから一棟にも三棟にも移動は可能。
彼女が出てきたのは三棟。
そして大泉は一棟。
これが何を意味するのか、ある程度の想像はつく。
部室へ戻ると、大泉は何事もなかったかの如く帰り支度をしていた。
腹を壊してトイレにいたというがそれが嘘だということを俺は知っている。
間違いなく愛梨と何かあったと思った。
愛梨の様子もどう見ても変だった。
近くで彼女を見てきた俺にそれが判断できないはずがなかった。
何かを隠して悩んでいる。
翔「おい、大泉!俺が部室の鍵閉めねーといけねーの知ってんだろ?トイレ行くならちゃんと言ってくんねーと困るんだけど?」
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