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俺は一体何を聞いたのだろうか。
耳を疑った。
(『許婚』?愛梨が大泉の許嫁?)
愛梨は今、藤沢と付き合っている。
それは周知の事実。
大泉の許嫁だとしたら絶対に付き合えるはずがない。
翔「大泉……おまえ、気は確かか?」
しかし、大泉は更におかしなことを言い続ける。
祐「正気も何も事実ですから。ん、俺、卒業したら彼女と一緒になるつもりです。」
そこまで言い切れるということはやはり事実なのだろう。
でも、一緒になるって……愛梨には藤沢がいるのに一体どういうことなのだろうか。
翔「おまえ、あいつがどれだけ藤沢のことを想ってんのか知らねーのか?」
祐「知ってますよ。けど、愛梨は今は少し勘違いしてるだけです。」
翔「勘違い?」
祐「昔っから淋しがり屋ですからね。俺がいない間にたまたま傍にいた力に寄りかかっただけで……まぁいいですけどね。結局は俺のところに戻ることになるんですから。それに…愛梨……さっき…俺に落ちましたから…」
(愛梨が……大泉に落ちた……!?)
翔「…まさか…おまえ……愛梨を……?」
大泉はうっすらと笑った。
祐「言っておきますけど、俺は彼女を抱いてはいませんよ。ただ、ちょっとキスしてみただけです。」
(キス…!?)
祐「身動きひとつせず、俺を受け入れてましたよ。」
愛梨があんな表情をしていた意味がようやく理解できた。
(身動きせずって…どうしてアイツは逃げなかったんだ?俺がした時はあんなにも抵抗しまくっていたのに…)
祐「彼女はまだ気づいていないんですよ。本当に自分が求めているのは誰なのかを。まぁ、そのうち返してもらいますよ。必ず彼女は俺を求めるようになります。」
何を根拠にそんなことが言えるのか不思議だった。
あの大泉の発言――…
俺はかなり気になっていたが、それでも愛梨と藤沢の関係は良好そうで、心配は全くいらないと思っていた。
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