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俺が向かったのはあの森。
彼女と出会った校内のあの場所なら人目につかない。
周りに誰もいないのを確認した俺は彼女をその芝へと下した。
気のせいだろうか。
下ろす際に感じた違和感。
担いでいた時には気づかなかったが、彼女は震えていた。
俺は彼女の手をそっと握りしめてみる。
彼女はやはり震えていた。
(…愛梨……もしかして……大泉に……?)
愛「…先輩……力……」
自分がこんな状態だと言うのに愛梨は藤沢のことを気にかけている。
(それほどに彼女は藤沢のことが……)
愛梨の藤沢への強い思いを俺は感じた。
俺はその場を立ち上がった。
翔「少しの間、ここにいろ……」
愛「…先輩?…」
不安げな彼女の頭を俺は囲った。
(…今の愛梨を藤沢の元へ帰すわけにはいかない……)
翔「このまま、藤沢んトコに行けるか?……行けねーだろ?」
愛「……」
翔「俺が何とかしてくるからさ、暫くの間、ここにいろ。いいな?」
そう言って彼女を残し、俺は藤沢のいるだろう部室の方へと駆けて行った―――
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