陰り

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そろそろ部活が終わりそうな時間――― 私は校内をウロウロした後、部室の前に帰ってきていた。 そこには神妙な面持ちの力と崎田がいた。 由「愛梨は?」 振り返るその力の顔から何かあったのだと私は感じた。 返事がないところを見ると、おそらく愛に関すること。 真「水月ちゃん…やっぱいないんだけど?」 そこへ真が合流。 (え?やっぱりって…?) 由「真……愛がいないってどういうことだよ?」 真「…さっきまでいたはずなんだけどさ…急にいなくなっちまって…」 GW中はどこの学校もだが、校内の生徒の人数がかなり激減している。 だから、誰がどこにいるかなんて分かりやすそうなものなのだけど。 由「愛以外にいないのって誰?」 その質問に力の表情が強張る。 崎「翔先輩と……大泉……」 またよりにもよってこの二人。 翔ってヤツは今日話した限りでは愛梨に惚れてるのはよく分かった。 まぁ、でもアイツの場合、女なら誰でも良さそうなフシがある。 祐は……というと、久しぶりにチラッと見たけれど、力が心配していたようにアイツ、めちゃくちゃいい男になってて、さすがの私も驚いた。 あの祐のツラ構え―― もう完全に愛梨のタイプ。 顔だけじゃない。 その外見は『王子』そのもの。 そりゃ、愛もあんな顔の祐に再会して迫られたら心が揺れても仕方がないのかもしれない。 といって、力が負けているとも言い難い。 力はどちらかというと『エロ王子』……いや、しっかりした顔立ち。 野球部ということで日焼けもそこそこして、まさしく『男』ってカンジだ。 そんな力は中学の頃、やけにファンが多かった。 それも男女問わず。  だけど力は愛のことしか興味がなかったから、そんなことは無頓着だった。 そんな二人をフツーの女がどっちを好むかとえば、そりゃぁ、好みの問題ってのもあるけれど、あの祐の容姿で王子的な迫り方をされたら誰もがコロッと靡くんじゃ?と正直、私は思う。 とはいえ、愛はもう力が大好きで大好きで仕方ないってのは、昨日今日の様子を見ていたら分かる。 ちょっと悪戯をしたら本気でヤキモチを焼いてたくらいだし。
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