陰り

7/10
前へ
/605ページ
次へ
校内とは思えないその鬱蒼としたその場所―― そこはまるで森のような雰囲気。 普通に考えて学生が入るような場所ではない。 翔「その先だ…」 こんな場所に愛がいるのだろうか。 生い茂ったその草をかき分けながらようやくたどり着いたその先に愛は確かにいた。 一面広がる芝生――― その場所に愛は一点を見つめ座っていた。 由「…あ…い…」 私はその彼女の元へと駆け出そうとした。 だけど、翔に止められた。 翔「あのとおりだ。何があったのかよく分からない。ただ……あいつ…大泉といた…」 やはり予感は的中していた。 由「…何処にいたんだ?」 あれだけ探していなかったのにどうしてこの男が愛を見つけられたのだろうか。 翔「…あぁ、体育倉庫……音がしてな。」 翔は偶然にも通りかかった体育倉庫からの音に気付いたという。 由「で、何やってたんだ?」 私のその質問に翔の表情が引き締まる。 その光景を思い出しているのだろうか。 目を瞑るとその眉を寄せた。 そして、大きくため息を洩らすと翔は言った。 翔「今から言うこと、冷静に聞いてくれ。ん…俺もな、必死で抑えてんだ。」 翔の拳は震えていた。 愛の方をただ黙って見つめ続ける翔を見て思った。 もしかしたら、こいつは愛を大事に思ってくれているのかもしれない。 由「分かった。私も冷静になるよ。」 私は覚悟を決めた。 何があっても愛の為に立ち向かっていくと―― 翔「…ん……なら大丈夫だな。」 そして次の瞬間、私はその事実を聞かされた。 翔「…愛梨な……大泉にキスされてたわ…」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加