詮索

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考えてみたら大泉のやってることは意味不明なことが多い。 跡取りだというのに、こんな公立高校に通いまともに部活動なんかやってインターハイ目指して。 祐「そんなことないですよ。跡取りになれば愛梨と一緒になれるんですから。」 (あぁ、そうか……そうだったよな。もし跡取りが嫌だとしても愛梨が傍にいればそれでコイツはいいんだよな…) 翔「だったらさ、その大泉グループっていう権力を使ったら今すぐにでも藤沢から愛梨を奪えるだろ?それに、今日だってギリギリで止めなくても無理矢理愛梨を抱けたんじゃないのか?」 さっき俺の手を掴み返したほどの大泉のチカラなら、愛梨を無理矢理にでも抱けたはずだ。 しかも、あんな放心状態にまで追い込んだ後なら――… 理性が働いたのだろうか。 それとも罪悪感? もしかして、俺と同じ気持ち? いくらそういうチャンスがあっても本当に大事な女なら抱けないと思ったのだろうか? 祐「そうですね。確かに俺は愛梨を抱くことはできた。けど、やっぱり愛梨の気持ちが欲しいって思ったんですよ。あいつ……最後まで…何度も『力』の名前を呼んでましたから…」 藤沢の名前を必死に呼んでいたその光景が目に浮かぶようだった。 俺は胸が苦しくなった。 翔「だから……ギリギリで止めたのか?」 祐「……そんなトコです。それに、今ここで抱いてしまうと、例え結婚できたとしてもあいつの気持ちは俺に一生向いてくれそうにないと思ったから…」 そういうと大泉は少し切なさそうな顔をして遠くを見つめた。 (やはり大泉はそれほどまでに愛梨を想っているのか。本当に好きなら、その女が大事だと思えば抱けないよな……) 心がないのに繋がったとしても残るのは罪悪感と虚しさ。 その気持ちは俺だってよく分かる。 祐「先輩だって……同じでしょう?」 大泉は見透かすような目で俺を見ていた。 崎「同じって……?」 崎田が不思議そうな顔で俺を見る。 祐「先輩、今でも愛梨を抱きたいと思ってるでしょう?自分のものにしたいと思ったこと今までなかったですか?」
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