諦めきれない想い

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倉庫を出ると相変わらずそこは閑散としていた。 近くの時計を見ると思ったより時間が経っていた。 祐「もうこんな時間か…」 愛梨との情事を見た翔先輩に倉庫にいろと言われたものの、俺にも都合がある。 俺は先輩を待つこともなく、その倉庫を後にした。 部室へ向かう途中、校内でうろつく不審者が視界に入った。 よく見ると、それは俺のよく知るヤツら。 (あいつら……あれだけ言ってたのに……) 嫌な予感がする。 放っておくわけにはいかない。 仕方なく俺は正門へと向かうことにした。 正門に向かう途中、俺は苛立ちを覚えていた。 その不審者のような連中に腹を立てていたわけじゃない。 自分がやってしまった行動――… 愛梨を傷つけてしまった。 あんなことをするつもりなどなかった。 けれど、あんなにも力のことを想う愛梨を見たら、いつの間にか俺はブレーキが効かなくなってしまっていた。 まさかあそこまで愛梨が力のことを想っているなんて俺は思いもしなかった。 あの出来事があってから、たった一年――… 確実にその日まで、彼女の心の中には俺がいた。 ただ彼女を守りたかった。 だからこそ彼女を守る為に嘘をついた。 それがあんなにも彼女を傷つけてしまうことになるなんて――… あの日、俺は彼女に弁解できなかった。 俺はアケミを抱いてしまっていたから。 あいつを裏切ってしまった負い目。 アケミの人生を奪ってしまったのは俺。 彼女に言われるがまま、アケミの彼氏として彼女が卒業するまで俺は彼女の傍にいた。 そして、彼女に求められ、何度も何度もアケミを抱きながら愛梨を想った。 今抱いてるのが愛梨だったらどれだけ良かっただろう…… そう思いながら――… そして、アケミの卒業後、俺はようやく解放された。 だが、その時には既に遅く、愛梨の気持ちは俺から離れていってしまっているようだった。 そして、俺が最も恐れていたことが起こった。 その瞳には力が映っていて、その想いは力へと向かっていて――
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