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そんな愛梨と俺は高校で再会を果たした。
あの日の誤解を解きたい。
今ならまだ彼女の心を取り戻せるという思いで俺は彼女に近づいた。
俺に彼女が動揺しているのはすぐに分かった。
そこには以前同様、俺の前で顔を赤らめる彼女がいた。
だが、その気持ちは力に向かっているようだった。
俺の目の前でどんどん綺麗になっていく愛梨。
力のチカラで彼女が『女の子』から『女』へと変わっていくのを目の当たりにした俺は焦りを感じた。
それでも、俺は力は愛梨に手をつけてないと思っていた。
けれど、それは単なる俺の願望だったのかもしれない。
力は愛梨に手を出していた。
それをまさか彼女の口から聞くとは――…
さすがに俺もショックを隠せなかった。
幾度となく彼女に気持ちを伝えた。
だが、彼女の心へ入り込むことは困難だった。
もう遅いと彼女に言われた。
だからといって俺はそう簡単には諦められなかった。
彼女の心の中に本当にもう俺はいないのだろうか。
それを確かめるチャンスがきた。
愛梨と二人きりになる為の――…
教室で初めて彼女にキスをした時、まだ俺にもチャンスがあるんじゃないかと思った。
それは、愛梨が俺に感じていたから――…
逃げることなく、俺の言うがまま彼女はそのキスを受け入れ、最後には俺の胸の中で身動きひとつせず抱かれていた。
当時、愛梨は俺をいつも『王子様みたい』と言っていた。
何がどう王子か分からなかったが、愛梨がそういうのが好きだっていうのなら、俺はそれになりきろうと図書館でそういう本を探しだして調べてみたり、ビデオを観てみたりした。
愛梨のことを想いながら、俺は彼女にふさわしい、あいつが求める男になりたいと思った。
けど、やっぱりなりきれない――
所詮、俺は偽りの王子。
単なる『男』だってことがさっき愛梨を求めながら嫌というほど分かった。
今日の愛梨はあまりに可愛い過ぎた。
他の部の男連中も愛梨の姿をちらちらと見ていたほど。
彼女は元々、かなり男ウケがいい。
一年の時、同じクラスだった男連中も何人か愛梨に告白したという話を耳にしたことがある。
しかし、既に彼氏がいるということで揃って玉砕してきた。
そんな彼女があの昔からやっているウサギのようなヘアスタイル。
俺はあのスタイルが凄く好きだった。
よく跳ねる愛梨にぴったりだ。
そんな愛梨を久しぶりに見て、俺は幼い頃と同じように、また彼女に胸が高鳴っていた。
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